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【プロローグ】フリッツ・レヴィン翁の体験




 酔狂な日本人も居たものだ。


 私が日本の片田舎でひっそりと経営する小さなドイツ語教室に通っている中年男。こいつは教室が無い時でもいきなり来て、やれ“王女”のドイツ語の綴りはどうだ?とか自分で創ったらしい風変わりな詩をドイツ語に翻訳しろだとか無茶を言い出す。


 何でも、中世ドイツを舞台にしたファンタジー小説を書いているらしいが、本職の作家ではなく、趣味で書いているらしい。


 そんな彼が今日、突然こんな事を云って来た。


 「噂で訊いたんですが、フリッツさんは戦争中収容所の看守をしてたって本当ですか?」


 誰から訊いたのだろう?確かに酔った勢いで誰かに話した記憶も無い訳では無い。しかしそれは出来れば墓に持って行きたい秘密だ。


 「ああ……あまり云いたくないが本当だ」


 「そこで何か恐ろしい体験など無かったですかね?いえ、今度投稿するホラー小説のネタが無くて……超常現象でも、物理的でも“恐い”と思った事なら何でも良いんですが……」


 いつも思っているのだが、この男の辞書に“デリカシー”と云う単語は存在しないようだ。


 日本人は礼節を重んじる人種だと聞いていたのだが、そうでない日本人もたまには居ると云う事か。


 「解ったよ、サトル、取っておきの恐い話を教えてやろう。その変わり、頼みがある」


 「何でしょう?」


 「この話を小説にする気なら、こう付け加えてくれ “この物語はフィクションです” と」


 「……解りました」


 いつもヘラヘラしている彼が、真剣な表情になり、懐からメモ帳とペンを取り出した。


 




 





【プロローグ】フリッツ・レヴィン翁の体験


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