Matinee
鋭くて柔らかい紫色の瞳を
冷たくて深いこの黒い瞳で
覆ってしまいそうだ。
【Matinee】
知りながら全てを避け、
自分を守って。
キミのように他を、なんて出来なかった。周りを見ればもっと分かったろうに、
目も耳も塞いだ僕は何も知らなかった。
あの他人も羨む程の
キレイな三角形はどこへいった?
トライアングルはいつの間にラインに。
キミは跡形もなく自分の点を消し、
世界は180°も回転した。
キミはきっと優しいから
一人で悩んで、
一人で決心して、
一人で決着をつけたのだろう。
そして、僕の知らない場所で
一人で泣いているんだね。
逃げることに疲れて、
嘘を吐くことに疲れて、
でも逃げることしか出来ない僕もまた、
笑顔で居ざるを得なかった。
いつかキミは外した仮面を
その変わらない横顔に括り付けて、
再び僕と出会うだろう。
一寸の狂いもない笑顔で
僕を昼の世界へ押し込んで、
夜の世界の向こう側で
優しすぎるくらいに呟く。
「こっちに来たらいけない」と。
切り替えた筈のココロが、
あの日々と同じ温もりになるとき、
キミの姿は無いというのに。
トライアングルのキミの点の
崩れて屑になった名残の破片は、
今も変わらず取ってあるというのに。
どうして僕は
"全て"を守らなかったのか。
出せない答えに悩んで、
やっとのことで見出したものは、
敵
ということだけだった。
光をも吸い込む黒に
光の存在を知らせてくれたのは、
白と紫の空。
吐き出した涙は
確かに七色に輝いていた。




