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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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神前挨拶 1

涼風(すずかぜ)が…………ミニ恐竜になってる…………!!」


 朝起きた私の目に飛び込んできたのは、レレさんを手伝って荷物を運ぶ小さな緑の恐竜くん。ギザギザのついたぽってりした尻尾が揺れている。


 今日も水色の涼やかな刺繍の入った布面をしている小さな着ぐるみ恐竜くんが可愛い!


「白熊バージョンとヒヨコバージョンも買いました!!涼風(すずかぜ)はクマと恐竜が気に入ったみたいですね~!」


 レレさんがフンスとガッツポーズをしながら言うので朝から笑ってしまう。


「さあさあ、本日は巫女のお勤めがございますゆえ、朝食に致しましょう!」

パンパンと手を叩きながらマキノさんが言い、レレさんが支度にとりかかる。

 

 月に一度、各眷属(けんぞく)が神前を守る神社や、そのものが祀られる神社にお詣りに行くのが花嫁に選ばれてからの決まりだ。


 行って、祝詞を暗唱しておしまい。特に大した事はしない。というかできない。

それでも神社側は大きなお祭りとして開催するので屋台も出るし参拝客も多く来る。


「今日は、どの眷属神の神社にいくの?」


「本日は大御神(オオミカミ)様の神前へ」


「オオミカミ……?アマテラスオオミカミ?」


なんだっけ、太陽神のお名前だっけ。


「ええ、人界では伊勢神宮と呼ばれておりましたか…………内宮にあたる 皇大神宮(こうたいじんぐう)に参る予定でございます」


 ずっと東京に住んでいて旅行なんてしたことのない私は伊勢神宮は初めてだ。


「いつもとちがうんだね?」


「ええ、今までのお勤めは御当主方への顔見せの意味合いが大きいのです。結衣様達からはお見えにならずとも、我らがお守りする神域に入られれば御当主達からは分かります故」


 そうだったんだ。桜子と違って何もできないのを見られてたのかと思うと複雑だ。


「そう…………今回は月宗様達の上司に会うって感じ?」


「わはは!そうですそうです!!社長にご挨拶するって感じですけどどうせお姿が見られるわけじゃありませんし適当で大丈夫ですよ!」


「これ、レレ!全くあなたは……まぁでも、そうですね。礼儀としてこれから花嫁を迎えますとご挨拶に伺うだけなので気負う必要もないかと」


「各御当主達から振袖が届いておりますよ~~!いっっちばん華やかで可愛くて高級なのにしましょう!!」


 八咫烏(やたがらす)の一族なのに、月宗様のプレゼントだけを勧めたりはしてこない。

私の喜ぶ様に、楽しませる様に動いてくれる事が嬉しい。


涼風(すずかぜ)も今日は狩衣(かりぎぬ)を着ますよ。父神(ちちがみ)様にお会いするのですからね」


 涼風(すずかぜ)がこくんとうなずく。

当然の様に涼風(すずかぜ)のお世話もしてくれて、涼風(すずかぜ)もなついている様で嬉しい。




◇◆◇




 新幹線での移動になると思っていたのに、月宗様が私を抱いて何か唱えたと思ったら伊勢神宮近くのホテルの広い部屋に移動していた。


「上手いじゃねぇか、涼風(すずかぜ)


「さすが第一天衛(てんえい)だな」


 後に続いて現れた涼風(すずかぜ)に月宗様と恭さんが口々に言う。移転の妖術はとても難しい物らしく、誰でもできるわけではないそうで、小さな涼風(すずかぜ)が難なくこなしたのでびっくりしているようだ。


 涼風(すずかぜ)は大きなカバンを持ったレレさんの手を握って連れてきている。


涼風(すずかぜ)ナイス!これでこちらでもお嬢様のお世話ができる!!」


 何故か楽しそうなレレさんが涼風(すずかぜ)をぎゅうぎゅう抱きしめて嬉しそうにする。


「桜子は笹音(ささね)が別のホテルをとっているはずだ」


 月宗様の指示だろう。彼は私をいつも桜子から離そうとしてくれる。守ろうとしてくれているのがわかって面映(おもはゆ)い。


「俺の送った着物を着てくれて嬉しく思う」

恭さんが優しく笑う。


「あ…………」


 ピンク色の振袖。母のお下がりの着物しか持ち合わせていない私が持っていない色で、桜の花と銀の流線がとても上品で美しい。


「よく似合っている」

栗色の短い髪が今日は片側だけ後ろに流されてセットされている。

紺色の軍服にはいつもより飾りが多く、階級章や勲章、銀の飾緒(しょくちょ)が揺れていて物語から飛び出てきた人みたいに見える。


 腰に下げているのは剣っぽいし、本当に現実味がない。


「こんな高価な物を、ありがとうございました」


「よろこんでくれたなら、それでいい」


 ふわっと笑うお顔は本当に整っている。

眷属神の当主はイケメンじゃないとダメなんだろうか。


 笹音(ささね)さんは銀の長髪が美しい王子様風だし、恭さんは目元に優しさのあるイケメンさん。


月宗様は————


「結衣、疲れてないか。移転は慣れないと辛い」


 真っ黒な紋付きの袴姿。シルバーの帯と、白く抜かれた八咫烏(やたがらす)の紋が鮮やかに映えて、凛として見える。

羽織を肩から掛けた姿があだっぽく涼やかで、彼の周りだけ空気が違う様な気さえする。

鋭い目つきの、カラスの当主。


「う、うん。大丈夫」


 涼風(すずかぜ)が私の袂を握って顔を覗きこんでくる。

お顔は布面で見えないけれど、心配しているのがしっかりわかって可愛い。


涼風(すずかぜ)、大丈夫だよ。涼風(すずかぜ)が一緒だもん。レレさんもいてくれてもっと安心。ありがとうね、涼風(すずかぜ)


 抱き上げるとにっこり笑った様な気がした。

お顔はわからなくとも、雰囲気で色々分かりやすい子で良かった。



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