表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

三題噺もどき5

不調の日

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/16

三題噺もどき―はっぴゃくごじゅうはち。

 




 今日は朝から、なんだか。

 体調が悪いわけでもない。

 嫌なことがあったわけでもない。

「……」

 ただ何となく。

 何かと何かのボタンが掛け違えているような。

 何かと噛み合っていないような。

 何かがおかしいようなおかしくないような。

「……」

 妙な違和感がずっと居座っていて。

 何をするにもなんとなく。

 身体が重くて。

「……」

 それでも学校に行かないといけないから。

 太陽のあまりの眩しさに眩暈を覚えながらも。

 食べた朝食が胃の中からせりあがりそうになりながらも。

 妙に痛む頭を抱えながらも。

「……」

 なんとか学校に来て、なんとか午前中を終えた。

 どの授業も、どうにも頭に入らなかったけれど。

 ただでさえ頭を抱えたくなる数学や英語の授業は、ノートを取るので精一杯だった。

 まぁ、まだ復習の段階も含めつつの授業だから……。

 とは言いつつも、ついていけない現実はあるので、なんとかしたいものだ。

「……」

 休み時間の間も、今まで通りに読書をしていたんだけど。

 頭には入ってこないし、ただめくるだけで、文字を追うだけで、それだけでなんとなく疲れて、早々に閉じてしまった。

「……」

 スカートの下に隠しているカッターには、手を伸ばさなかっただけ。

 マシな感じだな、今日は。

 よく分からない不調が一番面倒で嫌いでだるくて死にたくなる。

「……」

 今は。

 昼休みを迎えた教室にいる。

 もちろん、あの子の教室。

「……」

 昼食をそれぞれ食べ終え、談笑したり、スマホをいじったり。

 1学期が始まったばかりのこの時期は、教師が時折みにくるので、それを警戒しつつスマホをいじっている。ホントは校内での使用は禁止されているからな。

「ね、聞いてた?」

「……ん、ぁ」

 いけない。

 ぼうっとしていた。

 どころではない。

「……大丈夫?」

「大丈夫だよ、なんだった?」

 スマホをこちらに見せていたから、何かまた見つけたのだろう。グッズの最新情報だろうか、画面にはあるアニメのキャラクターを模したキーホルダーなどが映っている。

 ……ゲームとかアニメのグッズの最新情報とかって、どうして日中にされるんだろうな。学生は追うこともできない。私は買うお金もないけれど、物欲も刺してないから困らない。

「……」

「へぇ、かわいいじゃん」

 そう返事をしてみたのに、あの子はじっとこちらを見つめる。

 ついでに、パタリと、スマホを伏せてしまった。

 大きな黒い瞳と、目が合い、なんとなくそらしてしまう。

「……」

「なんかついてる?」

「……」

「……大丈夫だよ、何でもない」

「……ふーん」

「……ほんとに、ちょっと」

「ちょっと?」

「調子が悪いだけ」

 その答えに満足したのか否か。

 スマホを持っていた手を離し、こちらに伸ばす。

 何をするのかと思えば。

「……まぁ、今日はいいでしょう」

「なにが……」

 さらりと、頭を撫でられた。

 少し冷えた指先が、軽く耳をかすめる。

 じわりと、視界が滲む。

「楽しい?」

「たのしい」

 それをごまかすように、そんな風に言ってみる。

 微笑みながらそう答えた声に。

 ぎゅうと、苦しくなる。

「……」

 ほんと、この子にはかなわないな。










 お題:眩暈・滲む・ボタン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ