『狐をだましたじいさまのプレスマン』
あるところのじいさまが山へ柴刈りに行くと、一匹の狐がいた。じいさまが木の陰に隠れて見ていると、朴の葉を頭の上に載せて三遍回り、ぴょんと跳ね上がり、美しい姉様になってじいさまの前に出てきた。じいさまが、木の陰から飛び出すと、狐の姉様は、じいさまはどこに行きなんすか、と尋ねてきた。じいさまは、ここで間違えると、だまされてしまうのだと察して、姉様こそ、どこへ行く。それはいいが、少ししっぽが隠れ切っていないのでねえか、とふっかけると、じいさまにはそれがわかりんすか、と、顔を赤くして自分の尻を見たが、じいさまがふっかけただけなので、何も見えるはずはなかった。じいさまはさらに、お前にはわしの化けそこねがわかるまい、とふっかけると、じいさまもお稲荷様なんしか、と感心して、じいさまが腰にぶら下げていたプレスマンを、なでたりにおいを嗅いだりしたという。
教訓:狐をからかうのは危険である。深入りしてはいけない。深入りすると苦い思いをする。深煎りコーヒーと同じ。




