シーン65母親。
俺達の目の前にはボロボロに朽ち果てた村が見えていた。
すると俺の隣に立った彩ちゃんは小刻みに身体を震わせていた。
『皆……………………。』
そう呟き……涙を流す彩ちゃん。
俺は彩ちゃんの肩に手をおく。
俺を見つめる彩ちゃんの目はうるうると涙を溜めていた。
『俺達はこの様なことが二度と起きないように旅をしてるんだ。』
『はい……私もお供いたします。』
彩ちゃんはそう固く心に誓ったようだった。
あまりにも酷いこの痛ましい村の中あちこちに血溜まりと破壊され尽くした建物と瓦礫。
確かに彩ちゃんの言う通りここにはもう生き残っている者はいないだろう。
俺達が村を立ち去ろうとしたその時。
ガタガタっと瓦礫が崩れ落ちる。
するとそこへ現れたのは………全身がボロボロで何とか立ち上がろうとする一頭のオオカミだったのだ。
そしてまた……オオカミは目の前で倒れていく。
『えっ!?』
彩ちゃんは焦り、そしてその視線を倒れているオオカミだったであろう女性に向けられていた。
『おかあ様!?』
駆け寄った彩ちゃんは母親を抱きしめる。
すると彩ちゃんの声に気づいたのだろう彼女はゆっくりと目を開けていく。
『い…………いろど………り………なの…………?』
『そうだよ…………………おかあ………さん…………。』
『そう………でも……アンタが無事で……本当に良かったよ………。』
母親は息も絶え絶えにこたえる彩ちゃん。
そして彩ちゃんは涙を流し母親を抱きしめる腕が震える。
するとそこへ座り彩ちゃんの母親の傷を回復しようとしていたルキがいたんだ。
ルキは彼女の手をとると微笑み魔法を試みようとする。
その時。
女性は優しい笑を浮かべ首を横に振る。
『えっ!?でも………………………。』
ルキの言葉に彼女はゆっくりこたえる。
『お優しいお方……あなたが、お噂の竜の巫女様ですね?………ありがとうございます………でも私はもういいのです…………自分の死は受け入れております……そして私の娘…………いろどりを逃がせて、この子が無事だった事で満足しておるのです…………。』
『おかあさん…………………』
『いろどり………あなたもいつかその身に子供も宿せば私の気持ちも分かる事でしょう………そして………あなたにも今…………。』
彼女は衣服の中から何かを取り出そうとしていた。
『おかあさん!?どうしたの!?』
『いろどり……………………これを………………。』
そして母親がその手に何かを持っていた。
それは不思議に光り輝く絵筆だった。
『これは!?』
『これはの………聖獣とも呼ばれる事のある……我々………色狼一族に昔から伝わる絵筆です……私達の魂は………この絵筆の中にその身を投じていくのです…………聖なる光を有する我々は世界を聖なる力で守る存在として神からの力を与えられた…あの聖獣アルビダイヤ同様………アルビダイヤは存在を現した力として……我々はこの奇跡の絵筆にその身を投じながらも世界を守る力としてこれまでその存在を紡いできたのです。』
『おかあさん………………………………。』
『いろどり………あなたもいつかその時がきたら…………聖なる力としてこの絵筆の力となり…………そして世界の邪となるものから世を救う為に行動なさい………これから私が先にそれをおこないますのでね。』
『おかあさん……………そんな…………………。』
『そう悲しむ事はありません…………私はこれまでこの身を神と世界の為に使ってきました………そしてこうして娘へ役目を伝え………最後をむかえれる事ができて本当に良かった………』
すると彼女はにこりと微笑むと凛とした表情へと変わる。
『さあ……貴女はこれから世界のもう一人の聖獣として生きていくのです!!確かな未来の事は誰も分かりません………でも……そこにいる竜の巫女様はその未来が見えると聞きました………その未来が悲しきものならば……我々は足掻きましょう……例え誰かの犠牲をおったとしても………魔王ゼルドリスは誰かが討伐しなければ………世界は闇へと変えられてしまう事でしょう……魔王軍は……こうして…この村を襲ってきましたが………いろどり………あなたを逃がす事ができ………………そして…こうしてあなたは無事でいてくれた………これも世界にとって平和へと向かう一歩なのでしょう。』
すると母親はいろどりの頬に震える手で触れる。
『いろどり………最後にこうしてあなたを見れて……………そして話ができて本当に良かった………………………。』
『おかあさん…………………………………………。』
『いろどり…………みんなと頑張って生きなさい……………そして皆さん…………………いろどりは優しい娘なのです……でも今こうして一族を背負って貰うことになりました………どうか……いろどりを……よろしくお願いいたします。』
すると、か細くなっていく母親yの声。
『い……ろど………り…………………………』
『…………………………………………。』
『おかあさーーーーーーーーーーーーーんっ!!!』
そしていろどりちゃんの声だけがこの村に響き渡ったのだった。
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