シーン110二人の婚約…雷武は…。
俺はジジイのいる小屋から飛び出していた。
いつもいつもあのジジイは俺の気持ちを逆撫でするのが本当にうまいのだ。
気がつくといつもの大樹の下に来ていた。
『ふぅ………………あのジジイは本当に俺をイラつかせる天才だよな……何がルキの未来は決められているだ…………あいつの人生なんだ………あいつの好きなようにさせればいいじゃねえか………それが、この村の為だと!?………確かに俺はルキについて行き…………あいつを守るためにあの冒険にいってきた………だがそれは決してルキを守る為であってこの村の事など俺には二の次だったんだ……それがあのジジイはルキを無事こうして守り帰ってきた事がまるで俺を言う通りに動かしたとでも思って調子に乗ってんじゃねえのかあのジジイ。』
俺はそう考えただけでイラついてくる。
思えば俺が幼い時からそうだった。
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幼き俺は気がついた頃にはもう親がいなかった。
そんな俺はどうやって暮らしていたのか………今の俺……そしてルキの住む家に一人で暮らしていた……元々この村はほぼ自給自足だ…………用入りの時は街まで何かを仕入れには行くのだが、それ以外はこの村だけで充分暮らせるのだ。
そんな中…………………俺は一人で生きる術をここで学ばされる事になった。
それはこの村の長老の一人息子でありこの竜村の戦士であった………龍尾という男だった。
彼は誰に言われる訳でもなくある時……親を亡くして泣いていた俺の所にやってきた。
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バアンっと俺の家のドアが開く………いや……破壊されたのだ。
『なっ!!???なんだお前!!???』
『ハッハッハ!!俺は竜尾ってんだ!!よろしくな!!!!!』
『お前…………………勝手に俺の家に扉をぶっ壊して入ってきてなんなんだ一体!?』
すると竜尾は口を開く。
『おお………お前が雷武だな……俺は……お前の父親………………『竜牙』の元部下で今はこの村を守る戦士だ……………。』
『親父の部下…………………なのか。』
『ああ………隊長はよくお前の話をしてた…………隊長はこの邪馬国のスサノウという化物討伐と共にこの国を身を呈して守って散っていった……お前の母と共に………この俺にお前を頼んでいったのだ。』
『……………………そうだったのか………。』
『ああ………………だから……………………。』
ガシッと俺の首に腕を回し締め上げてくる竜尾。
『いつまでも、そんな面してるんじゃねえええーーーっ!?』
『ぐあああーーーーーーーっ!?やめろーーーーーーーーーっ!!???』
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それからあいつは事ある事に俺に絡んできた。
俺はこの男のこんなあっけらかんとした性格にいつしか心を開くようになっていった。
そしてルキと出会った……………………。
『雷武…………この子はお前の妹だ…………まだ赤子だが………この子には何かの力がある…………これからはお前が守ってやってくれ。』
『ええっ!?い………妹!?そんな話初めて聞いたぞ!?』
『当たり前だ…………お前の母が産んで俺に預けたんだ………初めて見たのは当然だろう。』
『まあ……………な………。』
俺が初めて見たルキは………眠っていた………そのすやすやと穏やかな表情で寝息を立てているのを見てると俺は不思議と穏やかになった。
俺はこの時…………ルキをずっと守っていく事を心に誓ったのだった。
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それから物心も着いた頃………ある時……俺達の元から竜尾が消えたのだった。
いつだったか聞いた話ではあの長老の息子だった竜尾。
俺は突然消えた竜尾を追うように長老の元に向かった。
『おい!!長老!?竜尾はどこへ行った!?』
俺の目の前には冷静に俺を見ていた長老がいた。
『なんだ………雷武か?どうしたのじゃ?』
『突然………突然竜尾が居なくなったんだ………俺達を残して………………………………。』
この時の俺はその衝撃に思いを伝えた。
するとあくまで冷静に長老は語った。
『ああ………竜尾はあの怪物スサノウを鎮める為に………この竜村を去った……この村の『しきたり』だ。』
俺は長老のあくまで冷静に表情一つ変えずにそう言った態度に無性に腹が立った。
『お前……………うすうす気づいてたけど……………竜尾はお前の息子なんだろ!?もっと感情的になってもおかしくないだろ!?それになんだよその『村のしきたり』って!?そんなものの為に俺達から竜尾を奪ったのかよ!!!???』
『ああ………雷武……………悪いな……これは全て……村のしきたりなのだ………竜尾もそれを受け入れたのだ。』
『うわあああああーーーーーーーーーっ!?』
俺は小屋を飛び出し…………しばらくの間………泣いていた。
だが…いつまでも竜尾は帰ってくる事はなかった。
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それからか……俺が『しきたり』というものに苛立ちを覚えるようになったのは。
『ふぅ…………ルキの花嫁姿か………見ないわけにはいくまいな。』
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