シーン108ルキと俺達と未来。
俺は熱い抱擁をしている二人を見ていた。
身体が興奮し今にも飛びかかりそうな自分の行動を堪えていた。
(ルキ…………お兄ちゃんには全部話せるんじゃなかったのかよ。)
俺はそう思いながら心が動揺していた。
昔は俺を探し回りいなくなるとすぐに泣いていたルキ。
そんなルキを誰よりも大事にしてきたつもりでいた俺だったのだが………これは父親のような心情なのだろうか。
他の男に頼るルキ………………だが。
すると俺はルテンの視線に気がつく。
(なっ!?これは………………………やばいな………こんなのがバレたらルキに怒られてしまう。)
俺はハラハラしていたが…………ルテンは話題を変えたのだ。
『ルキ………………そんな顔するな………久しぶりなんだ……俺………ルキの手料理が食べたいな。』
『うんっ!!いいよルテン!!じゃあ私作るから台所借りるね?………あ!何がいいかな?』
『ああ………せっかくだしゆっくりルキといたいから手間かかるのでいいか?』
『いいよ!じゃあルテンにシチューでも作るよ?』
『ありがとうルキ。』
ルキはそういうと奥の台所の方に向かったのだろう。
このままいてもやばいか。
俺が立ち去ろうとしたその時。
『兄様…………………………………。』
ルテンの声が俺の足を止めたのだった。
俺がじっとしているとルテンが姿を見せる。
『兄様……………お久しぶりです……ルキを守ってくれていたようで…………本当にありがとうございます。』
『お……………おう…………まあ当然だな………俺はルキに頼られているからな!?』
『はい……………実際………あの魔王との戦いにもなったのでしょう?そこに今の俺がいても勝てたかどうかも分からなかった………兄様がいてくれた事で守られたのだと思っています。』
どこまでもいい男ではあるこのルテン………ルキは本当にこの男と結ばれれば幸せになるのであろう……それは俺にも分かるのだ………分かるのだけれど…………ルキのあの予知夢……その背景にいる魔王が相手なのだ……………あの場に俺の代わりにルテンがいても勝てなかったかもしれない……ましてルキもルテンもあの魔王にやられていたのかもしれない………………。
そう思うと俺はルキの傍にいてやりたいという気持ちも大きく……しかもアレで本当に魔王ゼルドリスは完全に消滅したとは手放しでは喜べない自分がいたのだ。
するとルテンは意を決したように口を開く。
『兄様………兄様は俺達の関係が許嫁という半ば強制的な関係というのが気に入らないのでしょう?』
『なっ!?そ…………それは…………………………。』
核心をつかれた俺は声がうわずる。
そう……この男……完璧すぎるのだ………強くもあり、優しさも持っていて……そして……ルキの事をきっと大切にしてくれるであろうルテン……ルキの事はきっと俺よりも理解しているのかもしれない。
そう思うとなぜだか悔しい気持ちでいっぱいになった。
『でも………兄様………………俺は許嫁だから………………幼なじみだからルキを好きになった訳ではありません…………真剣にルキを一人の女性としてずっと守っていきたいんです!!!』
『あ…………ああ……それは俺にも分かっている………お前は良い奴だ………今もこうしてルキと俺にも気遣い話してくれてる事もそうなのだろう…………だが……………』
『長老様と…………………ルキの言う村の『しきたり』ですか?』
俺はその言葉にうなづいていた。
『ああ……昔から村のしきたり村の決まりだと耳にタコができるくらいに言っている村の老兵達が俺は気に入らないんだ…………これまでも………どうだ!?旅をしてきたがアイツは危ない目にもあったし怖い思いも沢山してきたんだぞ?初めからそんな旅には出ずに幸せな笑顔を見せてくれていれば良かったんじゃないのか!!!??』
俺はそう叫んでいた…………するとルテンは俺と向き合う。
『兄様…………………俺は今日ルキに婚約を申しこもうと思っています……これはあの許嫁だからという訳ではありません………ルキにもそれは話します……………そして断られたら……それはそれで諦めるつもりです。』
俺はルテンを驚きの表情で見てしまっていた。
『ルキを……諦める…………………だと!?』
『はい………それは彼女自身を許嫁としてではなく一人の女性として俺は彼女の意思も尊重したいからです!!』
真剣な眼差しのルテン。
俺はルテンに……………………………この時負けたと思った気がした………でも悪い意味ではない………この男を俺は義弟としてどこかで認めた瞬間だったのだ。
するとルテンが叫ぶ。
『ルキ!!』
『なあにルテン!?』
ルテンが俺の隣にいた麒麟に笑顔で接する。
『シチュー沢山作ってるんだろ?』
『えっ!?まあ、沢山あるよ!!』
『兄様……………そして君も……………。』
『一緒にルキのご飯食べましょうよ!!』
俺はそんなルテンに。
『ああ………ありがとうな。』
俺達は今日のこの夜を忘れない。
そんな幸せな時間を過ごしたのだった。
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