シーン105竜天という許嫁。
俺達の住む竜の富士。
この小さな村には俺達含め数十名の竜人が暮らしていた。
ドラゴン族という希少種………そしてそれは元々繁殖力が強い訳ではない……同族間では血が濃くなりやすく………子を成す事が難しいとされ……竜人族の女性達は多種族間との子を求める事が一般的なのだ………その為に、この竜の富士ではこれまで純粋な竜人の子孫を残せる事がなかった為だった。
そんな状況に苦しんでいた竜人族。
だが竜人族は長寿でもある…………その為特別な危機感を持ってはいなかったのだった。
そこで歴史の偶然とも言うべきか………ルキと同時に同世代のルキの家系とは離れた男性が存在したのだった。
男の名は竜天という名の人物だった。
この男はルキの幼い頃からの幼なじみで……そしてこの竜村の村長からは………ルキは竜天の許嫁として定められてるとずっと聞かされてきた。
俺はそんな話を耳にしてから…………この村のこの昔からのしきたり……そしてそんなルキを縛るような村に反抗心を抱いてきたのだった。
ルキはそんな運命とも言われてきた状況をどこかで認めてきた………だがルキが認めているとはいえ…………ルキの自由を奪うようなこのしきたり………竜天もまた認めているようであった。
竜天はと言うと……………村で道場を開いていた。
奴は、とある流派の若き剣術の指南役だった。
その名は『武神流』といったのだ。
この竜天という男……見た目容姿も俺があまり好きではない優男………だが……ひとつ刀を握らせれば………奴は……正に鬼とでも言うべき強さ………いつか…奴を叩きのめしてやる……そんな事も考えたこともあった。
実は、この俺……やつには数度あった程度だった……ルキの許嫁として紹介され……そして……それからは俺は奴を嫌うようになり顔を見せると俺は隠れるように姿を見せなかった。
すると奴は頻繁にここへ姿を見せなくなっていたのだが。
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俺達が仲間達を見送った数日後の事だった。
ルキがよそよそしく出かける準備をしていた。
『ん!?なんだルキ?どこかに行くのか!?』
『えっ!?ああ……お兄ちゃん……ちょっと麓の街まで買い出しにいってくるよ』
『ん!?買い出し?ああ………そんな事なら俺が行ってきてやるよ?』
『ああ、いいよお兄ちゃん……大丈夫だよ………だって私も仮にもドラゴンなんだよ?』
『ま、まあそうなのだがⅢⅢ……』
俺はルキのこの行動に何かを感じていた。
そう………直感という奴だ。
ルキは正直だ…………嘘などつこうものならば、どこか行動がキョドってしまいバレるほどだ。
怪しいと踏んだ俺はルキに問う。
『なあ………ルキ………そういえばお前…………しばらく竜天がここに来なくなったが…お前の事諦めたのか!?』
『と………突然…………なっ!?ななな…………何をい………いってるのお、おにい…………ちゃん。』
ルキの顔が真っ赤になり慌て…挙動不審に。
実に分かりやすい妹なのである。
そこへ麒麟がやってくる。
『おねぃどこか行くのかあ?』
『えっ!?ああ麒麟ちゃん………ちょっとおねぃちゃん買い出しに行ってくるからお兄ちゃんと遊んでいてくれない!?』
麒麟はルキが大好きだ…………そんな麒麟はルキの言う事を一番にきくようになっていた。
『おにぃ!!僕と遊んでえ!!!!!』
『お、おう……だがちょっと待っていてくれ…………今お兄ちゃんはおねぃちゃんに大事な話が!!???』
俺にまとわりついてくる麒麟。
するとこの時と言わんばかりに翼を広げ飛び立とうとしていたルキ。
『じゃ…………じゃあ私買い出しにいってきまーすっ!!!!!』
『おいルキ!!???』
俺にまとわりつき離れない麒麟。
普段なら何したいか聞き遊んでやる俺なのだが今はルキを。
だが飛び立ったルキ。
俺は空を見上げる。
そしてルキが向かった先を見据える。
ここから見てもルキの飛んでいく姿が見えた方向は麓の街だった。
そう………あの街にこそ………買い出しもそうだが…………あの街には竜天の道場もあるのだ。
普段ルキが街に行く時はそこまでオシャレをしないのだ。
だが今日に限りめかしこんでいたルキなのであった。
これは誰にでも分かりやすいルキの行動だった。
そんな俺は麒麟に告げる。
『麒麟………そうだなあ………今日は街に行って遊ぶか?』
そう……嫌な予感を感じた俺は……ルキを追う事にしたのだった。
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