アンドレア・エルフローレン3-1
2人を食堂に残し、休憩室の窓まで迅速に移動した。
と言っても、廊下のアイツにさえ気を配れば目と鼻の先だ。困難ではない。
食堂のドアのガラス部分に、カイルの顔が時折見える。
アイツの…観察するような眼を俺は感じていたが、何も聞かれず何も言われなかったのを幸いに、何も言っていない。
『聞かれてもあやふやにするよな?』
キッチンに居た時は聞こえなかったあの声が、聞こえてくる。
『薬の所為だとか…思ってないよな?』
窓から中を見る、ここからは誰も見えない。
『腹に産み付けられた奴は燃やさなきゃな』
上手く下を見れないが、誰かがいるはずだ。
『アイツが代わりに燃やしてくれて良かったじゃないか』
窓の斜め下に短髪の金髪頭が見えた。
『精神安定剤』
『興奮が治まっては来たかい?』
いつもの下卑た笑いが頭に響き始めた。
自分の鞄から小型のライトを出し、壊れてい無いか確認する。ちゃんと点く様だ。
軽く窓付近の壁を叩き、中に向かってライトで信号を送る。
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見えている頭がビクついた。
気が付いた様だ。
『言うこと聞いてくれたら良いねぇ』
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中にいる奴がこちらを向いた。
一緒の隊の奴ではない。見た事のない顔だ。
『誰だアイツ』
同感だ。
いや、そんな事より開けてくれはしないかと、もう一度信号を送ろうとする。
開けるまで壁を叩き、ライトを当て続けるつもりだった。
中の彼がこちらに来て、窓の鍵を外し隙間を開けた。
「やめてくれ、廊下の奴に気付かれたらどうする」
「ドアを開けてくれ」
「無理だ…アイツが入ってきたらどうする」
「…入れてくれ」
隙間は広がらない。
「お前…アンドレアか」
「俺を知ってるのか」
「話は聞いてる…あれだろ、成績優秀の上位ランカー…」
「そうか、なら協力を頼みたい」
「…」
『コイツ躊躇ってやがるぜ』
窓の隙間に指を入れ、勢いよく開け入る。
油断していた奴は勢い余って転んだが、気にはしない。
素直に入れないコイツが悪いのだと、心の中で悪態をついた。
「閉めてくれ」
情けない声を上げていた割には、瞬時に態勢を立て直した。
一旦言われたとおりに窓を閉め、鍵をかける。
鍵をかけた所で、廊下の奴が本気で来たら意味など無いが。
目の前のコイツがあからさまにほっとした所を見ると、無意味なことでも必要はそれぞれだとも思う。
「お前…1人か?」
「いや、ここに入れなかったから後2人、食堂に避難している」
「誰だ」
「1人は第一所属のカイル・キース。もう1人は先日救助した学生だ」
「学生?!?」
「そうだ」
「…足手まといじゃないか」
『それ言う?』
「救助対象者だ。規律は分かっているだろう?」
金髪の隊員は不服そうな顔をする。
「こんな状況でもか」
「あぁ」
『人殺しても分からない状況だから見殺しも出来るぜ?』
…もう一錠飲むべきだったか。




