A班 救助用機体5021 カイル隊員3-5
食堂に2人きり…滝中君と残る俺は、手持ち無沙汰になり、沈黙の時を過ごす。
一応、アンドレアと外の奴の様子を窺いながら、時折テーブル付近でしゃがんむ滝中君をみる。
今のうちに…アンドレアの名前を知っていた事を…聞いてみるか?
否、気が付いてからの彼らの態度を見ていると、お互い好意的な知り合いには見えない。
むしろ…アンドレアは彼を…避けている様な…目を合わさない様にしているような…。
なんだか…怖がっている?様な気さえもする。
それでいて、気にはなる様な…。
分からない。
滝中君は意識を戻した所で、ぼうっとしているのは当たり前なのかもしれないが、Restrictionで会話していた時の雰囲気とは少し違うように感じた。
そう、俺が思考を巡らしている間に、彼がこちらを見ていた。
「カイルさん、彼がアンドレア・エルフローレンさんですか?」
ド直球で来られた。
「あぁ。…やはり知り合いなのか?」
たじろぎながら聞く。
「いいえ…。直接的な面識はありません、彼も滝中の事は知らないでしょう…」
彼のまつ毛の影が…揺れている。
本当に彼は…まつ毛の長い…整った顔をしている。
幼さが残る雰囲気も、その癖理知的な物腰も、モテるだろうな…と思う。
漫画やドラマなら主人公で、学園物の映画なら主演男優にでも抜擢されてもおかしくない。
俺やアンドレアとは…違う。
俺らができるのは所詮脇役か…戦闘物の…。
そう考えた所で、ふと笑いがこみ上げる。
今の世の中が…現実がもう戦闘物ではないか、と。
「カイルさんに…誰かに説明するのが難しいのですが…」
彼が言葉を続ける。
「彼の名前を何度も聞いた事があるんです」
兄が第三所属だからな。それでか?
…否、兄が隊にいる事を知らなかったはずだ。
では…誰から?
「僕自身も…感覚的な話…と言うか…現実なのか夢なのか…分からなくて」
じっと彼を見ていた。
戸惑いながら話すその様子は、荒唐無稽な話を事実として他人に話す人間に共通した…何かを醸し出している。
実際、俺もさっき身に起こった事を彼やアンドレアに話そうとすると、こんな感じになるのだろう。
「ごめんなさい…上手く言えないですが…」
彼は言い淀み、黙った。
俺は…固唾を飲みながら彼を見る…彼から目が離せなかった。
彼も緊張しているのか…なかなか言い出せない。
意を決したように彼の喉が動く。
「カイルさんは…輪廻転生とかリフレインとか…って信じますか?」
「俺はっ…」
俺もまさにさっき経験したと、声を出す前に足元に何かが触る。
親指ぐらいの大きさの…胴体に複数の脚。
ヤツだった。
気付くと同時に足で踏みつぶす。
パキッとした感触が伝わる、コイツ一匹かと辺りを見渡す。
奥にあったはずの給水機が姿を消している。
目を凝らし、よく見ると…黒い影が蠢いていた。
そして、奥のドアに無数のアイツらがいた。
ヤツらは外へ出ようとしている様で密集しているが、そこからあぶれた奴がこちらに来たのだろう。
アンドレアを待っている時間はない。
必死に悲鳴を押し殺し、叫びかけた滝中君の口を手で塞ぎながら抱え、足でドアを開け、廊下に出た。
開けたドアの隙間から、一緒に出ようとするヤツを踏みつぶす。
下へ続く階段に身を潜め、様子を見る。
壁際の遺体が増えていた。
奴らがあっちのドアに集中しているのは、おそらくあれを喰う為だろう。
孵化したばかりの体には栄養が必要だ。
廊下にアンドレアは居なかった。
休憩所の窓の向こうにチラチラと人影が見える。
中に入れたようだが…何をしてるのか。
アイツらがドアを壊すか、開けて出てくる前に休憩所に入りたい。
滝中君を押さえていた手を放す。
「しゃがんで…付いておいで。いいね?」
頷く彼に笑顔を向けた後、休憩室へ移動を開始した。




