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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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95/200

A班 救助用機体5021 カイル隊員3-5

食堂に2人きり…滝中君と残る俺は、手持ち無沙汰になり、沈黙の時を過ごす。

一応、アンドレアと外の奴の様子を窺いながら、時折テーブル付近でしゃがんむ滝中君をみる。


今のうちに…アンドレアの名前を知っていた事を…聞いてみるか?

否、気が付いてからの彼らの態度を見ていると、お互い好意的な知り合いには見えない。

むしろ…アンドレアは彼を…避けている様な…目を合わさない様にしているような…。

なんだか…怖がっている?様な気さえもする。

それでいて、気にはなる様な…。

分からない。


滝中君は意識を戻した所で、ぼうっとしているのは当たり前なのかもしれないが、Restrictionで会話していた時の雰囲気とは少し違うように感じた。


そう、俺が思考を巡らしている間に、彼がこちらを見ていた。


「カイルさん、彼がアンドレア・エルフローレンさんですか?」


ド直球で来られた。


「あぁ。…やはり知り合いなのか?」


たじろぎながら聞く。


「いいえ…。直接的な面識はありません、彼も滝中(ぼく)の事は知らないでしょう…」


彼のまつ毛の影が…揺れている。

本当に彼は…まつ毛の長い…整った顔をしている。

幼さが残る雰囲気も、その癖理知的な物腰も、モテるだろうな…と思う。

漫画やドラマなら主人公で、学園物の映画なら主演男優にでも抜擢されてもおかしくない。

俺やアンドレアとは…違う。

俺らができるのは所詮脇役か…戦闘物の…。

そう考えた所で、ふと笑いがこみ上げる。

今の世の中が…現実がもう()()()ではないか、と。


「カイルさんに…誰かに説明するのが難しいのですが…」


彼が言葉を続ける。


「彼の名前を何度も聞いた事があるんです」


兄が第三所属だからな。それでか?

…否、兄が隊にいる事を知らなかったはずだ。

では…誰から?


「僕自身も…感覚的な話…と言うか…現実なのか夢なのか…分からなくて」


じっと彼を見ていた。

戸惑いながら話すその様子は、荒唐無稽な話を事実として他人に話す人間に共通した…()()を醸し出している。

実際、俺もさっき身に起こった事を彼やアンドレアに話そうとすると、こんな感じになるのだろう。


「ごめんなさい…上手く言えないですが…」


彼は言い淀み、黙った。

俺は…固唾を飲みながら彼を見る…彼から目が離せなかった。

彼も緊張しているのか…なかなか言い出せない。

意を決したように彼の喉が動く。


「カイルさんは…輪廻転生とかリフレインとか…って信じますか?」

「俺はっ…」


俺もまさにさっき経験したと、声を出す前に足元に何かが触る。

親指ぐらいの大きさの…胴体に複数の脚。

ヤツだった。


気付くと同時に足で踏みつぶす。

パキッとした感触が伝わる、コイツ一匹かと辺りを見渡す。

奥にあったはずの給水機が姿を消している。

目を凝らし、よく見ると…黒い影が蠢いていた。

そして、奥のドアに無数のアイツらがいた。


ヤツらは外へ出ようとしている様で密集しているが、そこからあぶれた奴がこちらに来たのだろう。

アンドレアを待っている時間はない。

必死に悲鳴を押し殺し、叫びかけた滝中君の口を手で塞ぎながら抱え、足でドアを開け、廊下に出た。

開けたドアの隙間から、一緒に出ようとするヤツを踏みつぶす。


下へ続く階段に身を潜め、様子を見る。

壁際の遺体が増えていた。

奴らがあっちのドアに集中しているのは、おそらくあれを喰う為だろう。

孵化したばかりの体には栄養が必要だ。


廊下にアンドレアは居なかった。

休憩所の窓の向こうにチラチラと人影が見える。

中に入れたようだが…何をしてるのか。

アイツらがドアを壊すか、開けて出てくる前に休憩所に入りたい。

滝中君を押さえていた手を放す。


「しゃがんで…付いておいで。いいね?」


頷く彼に笑顔を向けた後、休憩室へ移動を開始した。

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