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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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アンドレア・エルフローレン2-4

また、あいつだ。


『無視するなよ』


…聞こえた言葉を無視する。


「どうした。一度、滝中君を下ろすか?」

「そうだな。お前はこの子を見ててくれ。俺が1人で休憩室の方を見てくる」

『1人の方が楽だもんな』


自分の鞄を前に移動させ、食堂のテーブルに滝中君の腰を下ろさせる。

その間にカイルがサスペンダーをずらし、彼の身体を自由にする。

彼の手がまだ固く握られてる為、カイルに彼を支えてもらいながら、首から腕を離す。

衣服を整え、振り向くと彼はテーブルに寝かせられていた。

カイルが持つ鞄を枕代わりに置き、彼の状態をチェックしていく。


「息と脈は正常だな。…後は意識がいつ戻るか…だが」

「怪我はしてないのか?」

「今の所骨折や出血はなさそうだ」

「なら、ここで彼と居てくれ。休憩所の鍵を開けたら呼びに来る」


行こうとした時、彼がぴくっと動いた。

起きるかもしれない。そう、カイルと2人で息をのんで見守る。

瞼が揺れ、ゆっくりと目が開いた。


「気が付いたか…大丈夫か。滝中君」


カイルの呼びかけにゆっくりと頷く。


「何か飲み物を…探してくる…」


俺は彼から目を逸らし、食堂の奥へグラスと水を取りに行った。


『そんなに避けてやるなよ』

『相手は子供だぜ?』


分かっている。彼は普通の子供だ。

カイルの友人の弟…ではない。

なのに、何故かあの目が開いた瞬間、目を合わせる事が怖くなった。


もう一つのドアの前を慎重に屈みながら歩き、食堂の奥の受け渡し口に行く。

普段なら奥にシェフや給仕係がいるが、彼らも避難した後だろう…今は居ない。

手前に設置されたグラスを二つ持つ。

一つを給水機の下に置き、水を入れたが…水が切れた。

水を持って来てセットする時間も手間も無駄だと、キッチンに回ろうとする。

机をコンコンッと微かに爪で叩き、カイルを呼ぶ。

水の入ったグラスと空のグラス、キッチンの方を指さすと、カイルは頷いた。


空のグラスを持ちながら奥へ行く…何かの音がした。

外に居る奴を呼んでしまう恐れがある為、銃は使いたくない。

武器になりそうな物は、吊られた()()()くらいだった。


俺は仕方なくグラスと交換でそれを持ち、音がした方へ歩く。

薄暗いキッチンの端に、黒い影が見えた。


ぐにゅっ…


何かを踏んだ。

黒い影に気が行き過ぎて、足元に何が有るか見ていなかった。

それは倒れた給仕係だった。

足を退け、顔を見る…今日も見た顔だった。

脈は無く、死んでいた。

開かれた目は、もう何も映さない。


キッチンの床には、丸い影が散り散りに落ちていた。

丸い影に見えていたモノは、死んだシェフ達と給仕係達。

そして彼らの腕や…足。

喰い千切られた、彼ら人間だった。


もしかしたら、奴らが居るかもしれない。

そう、気を引き締める。


ジリジリと歩を進める。

喉が焼ける様な気がして、俺も喉が渇いていた事に気が付いた。


微かにカタンカタンと、何かが揺れている音がする。

黒い影の前に近付き…見る。

何かが揺れる音は、痙攣している人間の振動が調理器具やキッチン台に伝わっている音だった。

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