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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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アンドレア・エルフローレン2-3

二階に着くと目を疑う光景が広がっていた。

エレベーターの前の…右側の壁は激しく叩き付けられた様な血の跡が残り、その下には隊員と医者たちの遺体が折り、重なって積み上げれていた。


「何が…」


口を開いたその瞬間、何かが一直線に横切って壁に激突した。

動体視力クイズの様に左から投げられたモノは…人間だった…。

人間が壁に当たり、落ちる。そうして出来た山が…あの遺体の山。

読んで字の如く…とはまさにこの事か…とたじろぐ。

隣のカイルを見ても、同様だった。


投げてくる者の正体は、ここからは見えなかったが、予想は出来る。


「奴だ」


俺は、一歩下がった。

カイルは青ざめている。

無理もない。

曲がった廊下の先に…居るとすれば、外に居る化け物の幼体。

カイルの苦手な蜘蛛の様な姿をした奴だ。

しかも、潰せる様なデカさではないはずだ。

しかし、あの廊下を行かなければドックはもちろん医務室まで行けない。

階段を数段降り、身を屈めた。


「どうする。廊下には多分だが…アレが居る」


カイルに小声で問う。

額に両手を当てて蹲る彼に、心情は解れども…ぐずぐずはしていられない事を告げる。


「分かっているんだ…」

「だろうな…。休憩室の窓からドックと医務室前の様子を見よう。ただ奴がどの位置に居るかが分からない。医務室より手前なのか、奥なのか。幸い休憩室のドアはこちら側に近い。音を立てずに中に入れば…」

「そうだな…そうしよう」


階段をゆっくり上がり、休憩室の壁伝いに歩く。


ぐちゃ…ぐちゅ…


廊下に水気の含んだ音が響いている。

その間間に…誰かの声の様なモノが聞こえる。

言葉にならないうめき声の様な…ただの音の様な…。


身を屈ませ、休憩室の窓の端から中を窺う。

反対の…奴が居る方の廊下の窓を見たが、やはり奴の姿は確認できない。

遺体が投げられ、山が一回り大きくなる。


こちらから見えないという事は、あちらからも見えない筈。と、高を括るのは危険だ。

背に居る彼が不意に意識を取り戻して、一言でも発せば…とさらなる危険に不安を持ちながら、進む。

身を出来る限り低くしたカイルが先行し、休憩室のドアノブに手を掛けた。


「開かない」


悲壮な顔が、落胆の深さを物語っていた。

休憩室の窓が開かないか、指で少し押してみたが…それも駄目だった。

銃で応戦するにも、俺とカイルと…2人とも一丁ずつしか銃を持っていない。

一匹()れたとしても、他に居れば…おしまいだ。

出来る限り戦闘を避けたかった。


しかし、このまま廊下に居るのも危険だと思い、一度反対側の食堂へ入る事にした。

食堂のドアは二枚有り、奥は奴に見つかる危険性が高い事から、近くのドアからの入室を試みる。

無事ドアが開き、入れた。

すぐさま鍵をかける。

そして…休憩室にも誰かが居て、中から鍵を掛けている可能性に思い至った。


「窓からは分からなかったが…俺達同様、中に誰かいるんじゃないか?」

「そうかも知れないな。…メンテナンスか…他の隊員か」


どちらにせよ、協力して脱出を目指せれば…と思う。


「しかし…侵入されていたなら…あいつらの特攻も頷けるな…」


食堂の窓越しに、休憩室とドックへ続く廊下の様子を見ながらカイルが最後にぽそっと呟いた。

戻る場所(ドック)が無くても、生きて他の基地に戻れば良いのにと、考えてしまう事は口には出さなかった。

当事者の思いやプレッシャーを、軽々しく非難出来る立場に俺は居ない。

今までの被害者の為、これからの未来の為…各々、背負っていた思い。

それが隊による洗脳でも、自主的な使命感でも…ただの思い込みでも…。


『無駄死にだよなぁ?』

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