アンドレア・エルフローレン2-2
俺とカイルがドックの駐車場入り口前の屋根下に入った直後、俺が立っていた所に機体が落ちた。
「危なかったな」
カイルが間一髪だと笑う。
背の滝中君は意識を戻したのかと思ったが、戻っては居なかった。
あの、子供の声は一体誰の声だったのか、考えながら彼の身体のポジションを直す。
俺の…異様な胸の高鳴りは治まっていた。
ドックの一階は、トラックや色々な搬入口として使われる駐車場スペースと、隊員達用の玄関がある。
駐車スペースの前は、アコーディオン型の重い鉄ゲートが閉まっていた。
上官の持つ、専用の鍵が無いとゲート操作が出来ない。
もちろん、俺達は持っていない。
化け物の視線と落下する機体から身を隠す様に、屋根の下を移動し玄関前に回る。
ガラス張りの扉の向こうを、何か、誰かいないか確かめる。
広々とした空間だけが、そこにはあった。
右側に研究フロアに続く廊下が有り、左側直ぐにドックへ向かう広めの階段がある。
階段の横の廊下を歩けば右側に隊員達が使う第一食堂、左側に休憩所が有り、向かい合う食堂と休憩室の奥に二階までのエレベーターがある。
が…使う事は滅多にない。
エレベーターに向かって左の廊下の先に駐車場に続く扉があり、これも上官の鍵が無いと入れないので、その先の作りがどうなっているのかは知らないが、ドックと駐車場が階は違えど同じ位置だから、ドックと廊下を挟んで向かいにある医務室の下、一階部分は倉庫なのかも知れない。
ガラス張りの扉を開けて入ると、いつもならうるさい程賑やかな廊下が静まり返っていた。
外で飛び回る戦闘機の数を考えると、まだ隊員達がちらほらいてもおかしく無いはずなのに、一階には誰も居ない様子だった。
避難したのか?とも思うが、それにしても様子がおかしい。
何が、とは言えないが、違和感があった。
「アンドレア…何か様子がおかしいぞ」
カイルも異変に気付いているらしい。
「あぁ、ここまで人が居ないのは…何か変だ」
「全員二階か?…避難したか?」
外の戦闘音は微かに聞こえるのに、館内に音が一切しない。
俺達の靴の音が聞こえる程…静かだ。
「食堂か休憩所に誰かいるか見るか?」
「否、滝中君が意識のない今、早々にここを立ち去り第一か第四かに移動した方が無難だろう」
カイルが首を振り、手前の階段の方へ進む。
生存者を確認するのも大事だが、優先順位を間違えてはいけない。
しかし…。
「そうだな…だが、医務室には寄ろう。この子の兄が居るんだろう?避難しているか確認は必要だ。ついでに何か薬か…とにかく何か使える物が有れば持っていこう」
その提案にカイルも同意し、階段で先を急ぐ。
二階はメンテナンス達の休憩所、医務室、メインドックとその先に滑走路がある。
一階の第一食堂の上に第二食堂、休憩所の上に二階の休憩所が位置している為、休憩室の窓からはドック内が見える。
エレベーターの左側廊下には、一階にある扉の様な物はなく、そのままドックと医務室へつながっている。
ドックは二階と三階をぶち抜いて、高さが作られている。
そして、ドック内から見上げれば三階の廊下が見える。が、白衣を着た者がうろちょろしているのを見た事があるだけで、何をしているのかさえ知らない。
この建物は五階まであるが、研究フロアからしか上がれないので、俺達隊員は一階と二階以外は行った事がない。
今も脱出の為に二階以外は用がないので、生涯行く事は無いだろう。




