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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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アンドレア・エルフローレン2-1

カイルと学生の子、2人を見つけた時は安堵した。

今度こそ、2人が死ぬ前に見つけられたと…。

化け物に打ち落とされるとは思っても居なかったが、幸い木の上に落ちる前に脱出できた。

これで、2人をドックまで守り、最終安全な…次の基地にまで連れて行けば…良い。


カイルが抱えていた男の子、滝中という子は意識を失っていて、通達事項の…写真を見た時に感じたバツの悪さは感じなかった。仄かな懐かしささえも。

どうして、会うのが怖かったのだろうと思うくらいに、目の前の子は俺にとって普通の子供だった。

少し色素の薄い髪をした、普通の。


そして…あの声は、今の所聞こえない。

やり直した後にも、聞こえていた俺をあざ笑いながら罵り、責める声。

聞こえていたら…俺は2人の前でも平静で居れただろうか。


少年を抱えているカイルから、ここまで来る過程の苦労を察する。

ここを突破する為、少しでも生存率を上げようと消耗したカイルから俺へ、少年を移す。

年相応なのか、細身だからか、思いの外軽かった。


ドックへは三分の一程度の距離。

カイルはさっきより幾分マシな顔をしている。

俺達は軽口を叩きながら、化け物どもの間を走り抜けた。

泥状の土は足を取るが、奴らの体液に比べれば、抜ける事に造作はなかった。

上から降る雨も小降りになったおかげで、目的地までの道も選び易くなり、化け物どもの動きも見えやすい。


ドックに近付くにつれて、玉の様な形状になった奴らの体液が至る所に落ちている。

が、広がっていない分通り抜けられた。

しかし、奴らの数は未だ多かった。

排出していたモノは消えたというのに、何という多さだろう。

上で戦う隊員も…もうすぐ弾薬切れを起こすだろう。


「カイル!急ぐぞ」


やや後ろを振り返り、カイルに声を掛ける。

スピードアップを図りたいが足元が悪く、泥濘から足を抜く度に、裾の泥が増えていく。

カイルが横に追いついて来ると、目線一つで進路を示す。

俺達のすぐ後に、戦闘機が落ち始めた。

弾切れの隊員達の特攻が…あの時と同じ様に、また始まった。


「アンドレア!機体が!!」

「見ずに走れ!体力を使うな!」


俺は特攻していく戦闘機に、気を取られるカイルを叱責する。

そいつらは助からない。

落下し四肢の骨が折れ、芋虫の様にしか這えん。

一度目の俺の様に。

…もしくは、全身の骨が砕け苦しむか、死した事すら気付かず死んでいる。

何かを救えたのか、何を助けて来たのか、疑問さえ誰からも答えられず、悶々とした思いのまま死ぬしかないんだ。

…そんな姿を、死んだ後でも仲間に見られたくはないだろう。

出来れば、遺体確認もされないまま朽ちたいはずだ。


『本当に?』


聞こえないフリをする。


『本当は「死にたくない」だと分かってる癖に』


カイルを見る。後ろを見ない様に走っている。

後ろに落ちていく機体。乗っている隊員達。


『落ちた奴らはアイツらの()()だな』


頭の中に薄ら笑いが聞こえる。

…胸が痛み、足が止まる…。


「アンドレア!どうした、走れ」


カイルが追い抜き振り返る。

ドックまで後ほんの少しなのに、足が止まって…動かない。

カイルに叱責したのに…俺が、後ろの奴らの事を確認したくて溜まらない。

ぐっと目を瞑る。


「…だ…しゅ…  …」


耳元で、か細い子供の声が聞こえた。


「ダッシュ…ゴー…」


その声を聴いた時、心臓が熱くなり胸が高鳴った。

そして、気付くと俺はドックの駐車場ゲートの前まで走っていた。

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