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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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8/200

アンドレア・エルフローレン(通称ポチ)4

動物の死の描写と残酷な描写があります。

苦手な方はご注意ください。

坊の側に辿り着いた時、坊の側に何があるのか知った。

「かな」が倒れていた。

かなの頭は瓦礫に埋まり、下半身だけがこっちから見えてる。

…坊はかなの側で蹲り泣いていた。

坊の声はわてにはまだ聞こえん…が、叫んでいるだろう事は分かった。


「くぅぅん…(坊…)」


坊にすり寄り、頭を坊の肩へと当てる。

坊は見た所酷い怪我はしていないようやった。


「…ポチ…」


泣き顔は酷かった。

黒い汚れと赤い血が服や顔に付き、服は所々破れている様で、汚れた皮膚が見えてる。

顔を舐めるわてを坊は優しく抱きしめてくれた。

暖かい。その温かさで、わての腹の痛みは消えるかの様な気がしてくる。

めっちゃ痛いけど。


わてはその小さい腕に身を任せた。

思ったより弱ってるようやわ。立ってられへん。

坊が泣いてる顔が目の前にあった。

ええわ、痛いししんどいけど…坊…坊の側にいれたら…。


わての目がさらに黒い靄に覆われ始めて来た頃、またあの嫌な気配がした。

重厚な空気。風と共に…。今度は近い…。


「う”う”う”ぅ…(坊逃げぇ…)」


最期の声を振り絞ったが、唸り声しか出ん。

風はきつくなる一方で、アレが近付く事だけが分かる。

ゆっくりと降りてくる様な、そんな気配。


何や、何する気や。

辺りには坊しか居いひん感じがしてるのに、戦闘機は去らない。

それどころかゆっくりと、機体を下げてる…風が強い…。

着陸でもすんのか?

わては頭を動かせるだけ動かし、上を向いた。

戦闘機から細い筒の様な物が出ているのが見えた…。

機関銃が坊を狙ってる!

カチリと何かが鳴った気がして、わては坊の体を思いきり体全体で蹴り上げた。


トタタタタタタッン!!!


「キャウッウン!!!」


坊を狙った銃弾はわてと道路に穴を空けた。

もうあかん、わては死ぬ。坊はわてを抱えた。


「キュウゥン…(逃げ…)」


ちゃんとした声すら出せん中、必死に訴えた。

逃げてくれ、頼む。お前の側で死にたいけど、お前が死ぬのは見たくないんや、坊。

お願いや…痛い…あかん…坊…わてを置いて逃げるんや…坊…。


昔の…この犬の生の昔を少し思い出した。

拾われた子犬の時代。

全てが怖かった。

親は気付いたらおらんかった。

臭いぐちゃぐちゃの中、気付いたらみーみー鳴いてた。

わての他に何匹かいた。鳴いてるもの、動かんくなったもの、小刻みに震えているもの…。

兄弟のしっこと肉片の中。わてらは鳴いてた。


生きたいって。

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