A班 救助用機体5021 カイル隊員5
彼はアンドレアのフルネームを、何故か知っていた。
「アンドレアを知っているのか?」
滝中君に聞いた直後、激しい音が鳴り響いた。
俺達のすぐ横を、化け物の死体が飛んできたのだ。
ゆっくり話している場合ではなかった。
それでなくても、準備に時間を割いた。
とにかく今はドックへ急がねば…。
「話は後だ、ともかく急ごう!舌を噛まない様にな!」
俺は彼を抱え、走った。
化け物達の足は、一つ一つが建物を支える柱の様に太い。
しかも、毛のような何かが斜めに生えている部分もあって…俺の嫌いな多足類の…クモ系を想像させる。
こいつ自身は蜘蛛ではない、が幼体がまさにソレに見えて苦手だった。
大きさはこいつ程ではないが、幼体でもかなり大きく、人間の2人分の横幅に…足が多数生えている…戦闘機に乗っている間はいざ知らず、生身対…となると…。
出て来ない事を祈るばかりだ。
上下するそいつの足を、潜り抜ける。
大きさの所為か、そんなに速く無かったのが幸いした。
俺が注意すべきは化け物自体と、足元に散らばる瓦礫や飛んでくる瓦礫、そして化け物が耕した訓練場の泥化した土。
銃弾は大半が化け物に当り、地面には到達していない様だった。
出来る限り物陰を選び、木や大きめの瓦礫に身を寄せて、化け物から隠れ逃げる。
ドックへ続くアスファルト道の部分を通りたかったが、化け物はこっちの考えなど関係なく動くき、アスファルトが砕け、散乱している部分も多い。
丁度、アスファルトが土にめり込み、斜めになっている所を見つけた。
化け物達はでかい図体で、足元を動く俺達に気付いていない。周りには幼体もいない。
俺はその陰に隠れた。
こんな状況で安全とは言い切れないが、抱えている彼の様子も確認したかった。
「滝中君、大丈夫か」
「はい…」
腕の力もまだ抜けていない様だった。
「今で約半分って所だ、気をしっかり持っていてくれ」
少し息は上がっているが、行けるはずだと思い周辺を見渡す。
俺はアスファルトの影から出て、走った。
が、動けなくなった。走れない。何かに足が取られている。
見ると、粘体質な透明に近い液体…化け物の体液だった。
「手を放して俺から離れろ!」
否、離れた所で足元は同じ…。しかし…!
息を吸い、吐く。落ち着いて…言わねば。
「首から手を放して、俺を踏んで逃げろ…」
「でも、カイルさんは!?」
「動けない」
「え…」
「手を離したら後ろに倒れるから、君はサスペンダーを抜けて、俺の上を通って体液に気を付けながら行くんだ」
「そんな…」
「ここに居ては危険だ。分かるね?」
彼は首を横に振る。
「…手を離すんだ」
彼は身じろぐ。
彼の手を無理やり剥がそうとしたその時、息が出来なくなった。
降って来た化け物の体液に、包まれていた。
俺は彼の腕を掴み剥がそうとする。が、粘体の中、力が入らない。
彼の髪が体液の中で揺れるのが見える。
このままでは…2人とも…死ぬ。
息が出来ず、体内に流れ込んでくるのが分かる。
も掻くが、苦しさで力が抜けていく…。
「mission 失敗」
何?
「mission 失敗…Continueしますか?」
何が起こった??
「Continueしますか?」
Continue…だと?
「Continueしますか?」
械的な女性の声が聞こえる。
戦闘開始時と終了時に聞くあの…。
「Continueしますか?」
答えは…YESだ。
「…select...A...2-3…start」




