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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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72/200

A班 救助用機体5021 カイル隊員4

使えるもの一式を持って、滝中君の元へ行く。

力なく俺を見る彼を手で制し、彼を抱える身支度をする。

エリオットのサスペンダーを最大まで伸ばし、自分のベルトに二カ所括り付けた。

そして、結んだ場所を後ろに回しズボンに通し、残りを自分の首に引っ掛けた。


「よし、滝中君」


へたり込む彼の横にしゃがみ、彼を横抱きにする。


「首に手を回すんだ、僕の首に引っ掛かっているサスペンダーの下に手を通して…そう。そして首の後ろで手を組むんだ」


言われるまま俺の首に手を回す彼を、片手と足で彼の体重を支えながら、首にかかったサスペンダーを伸ばし、当てる。

密着した彼の微かな震えが、伝わってきた。


手を離せば俺か彼が痛い目に合う…慎重に一本を彼を包んだ形でベルトに括る。

エリオットがx字の、しかも伸びるタイプのサスペンダーを着けていてくれて良かった。

残りの一本も彼の膝裏を経由してベルトに括りつけた。簡易抱っこ紐だ。


「どこか痛くないか?少し苦しいかもしれないが、我慢してくれ」

「大丈夫です」


ちょっと恥ずかしそうな彼の顔を見て、やはりまだ幼いなと思う。

これも体格差がなければできない事だから、小柄で良かった。

まぁ、この頃の子はこんなモノなのかも知れないが…。

彼の尻の下辺りにエリオットの腰バッグを当てて、これも腰に着ける。

片手で支えられる重さではあったが、ある方が安定と体重の分散が見込まれる。


この、簡易抱っこ紐も腰バッグの当て方も、藤田に教わった。

純が眠ってしまった時に、こうやって自分の身体に括りつけて公園から帰ってきたのだ。

実践するとはあの頃、思ってもいなかったが、知識はあるに越した事はない。

こうして人を救う役に立つのだから…。

無学だった時の俺には、想像がつかない。

「大人になっても、身体や命をかける事しかできない」と思っていたのに、この国に放り込まれ、藤田達と出会い学び、アンドレアに命を救われ…エリオットがサスペンダーをしていなかったら…、一つとして欠けていたら、俺はここに居なかったし、この状況を打破する気力も無かっただろう。

人生とは面白いとも思う。


彼を抱え、立ち上がる。

サスペンダーは緩む事無く、俺と彼を一つに縛っている。


「準備は出来た。君は落ちない様に、しっかりと組んだ手を離すなよ」


二度小さく、しかし、しっかりと頷いた彼を見て、純が中学生に成れていたら…この子みたいな感じになっていたのかも知れないな、と思う。

口元に少し笑みが浮かんだ。


腕の中の彼が不思議そうに見る。


「いや、君が友人の弟と少し似てて…思い出したんだ」


そう彼に答え、小さい銃を一丁だけを持った。

大きな化け物相手には心もとない、何なら通じないモノだが、ドック内にアイツの幼体が入り込んでいる可能性が考えられる。その時には有効だろう。

ま、数が居れば終わりだが、この子を逃がす時間稼ぎにはなるはずだ。


「よし、行こう。…無事逃げられたら、藤田とアンドレアとエリオットと…橘君に、感謝だな」


そう彼に笑いかけると、彼は少し驚いた顔をして、呟いた。


「アンドレア・エルフローレン…?」


彼の震えは止まっていた。

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