A班 救助用機体5021 カイル隊員2
滝中君を少し横の、安全そうで尚且つ雨に濡れるのが少しマシになりそうな、屋根の役割を持った壁に寄りかからせ、エリオットと橘君側へ立つと、無残な現実がヒシヒシと伝わってきた。
「この二人はもう死んでいる」
目や脈を診て、生死を確認するまでも無かった。
忍びなく思いながら遺体を置き去りに、滝中君の元へ戻ると、頬に影を落としている睫毛が、震えて居るのが分かった。
「滝中君」
声を掛けると、瞳を濡らした彼が見上げた。
頬に流れる雫は、雨なのか涙なのか分からない。
「どこか、痛い所はあるかい?」
俺の問いに首を横に振り、答える。
「立てるかい?」
彼は頷き立とうとするが、足がおぼつかず、そのままその場に崩れ落ちた。
「頭を打ったりとか、足が痛いとかは…ないね?」
彼の気持ちが十分に分かる俺は、ゆっくりと話しかけた。
「このままではいつ瓦礫が降ってくるか分からない。それに…雨でずぶ濡れだ。風邪をひくといけないから、本館へ行こうと思う。が、先に何が有ったか周囲を確認したい。僕が行ってくるから、君はここでじっとしていて欲しい。分かったね?」
静かに頷く彼を置いて、その場を離れた。
そのすぐ後、雨でも消しきれない悲痛な叫びと泣き声が、壁影から聞こえてきたが、俺は周りを確かめる事を優先した。
慰めてやるには、俺には言葉が足りな過ぎた。
彼らの関係も深く知りえない他人の俺に、吐かれる言葉など無意味だ。
彼を「安全に本館まで連れて行く事」が一番の優先事項だ。
しかし、現状はとにかく悪かった。
今いる崩れ去った建物の横では、黒い物体が数体倒れていた。
が、群れを成して襲ってきたのだと分かる。本館の方にも奴らが突進していくのが見えた。
上からも戦闘用機体が何機も飛んで応戦しているが、これは…本館すら危ういかもしれない。
予期せぬ近くに、こいつ等の発生源が出来たのだろう。
警報や出撃準備もできないまま、戦う羽目になったのは想像に容易い。
訓練所の併設されたドックからだけでなく、本館の戦闘機が数機上空に出てきている。
非常事態だった。
しかし、本館の戦闘機は先頭に加わることなく、ゆっくりと回転し、逆へ飛び去ろうとしている。
この基地は見捨てられたのかも知れない。そう思えた。
急いで滝中君の元へ戻り、状況を説明した。
「ここはもうダメだ。本館の戦闘用機体も戦闘に参加せず飛び去った。だから我々も本館ではなく違う基地へ向かう」
基地は駄目になった時用に、多数立てられている。
ここを放棄するとなると、近隣の基地も危ないだろう。
その場合の撤退先は第四基地か第一基地…どちらかで態勢を立て直すはずだ。
「本館の戦闘機が去るという事は本館の中の人間は避難しているという事だ、だから本庄凛君も一緒のはずだ。だが、問題は我々だ。ヘリが残っていたとしてもドックまで、この雨と化け物との中を潜り抜けていかなくてはならない。本館とドックの間では激しい戦闘で銃弾の雨も降っている…」
ここで一息つく。
吸って吐いて…。
「いけそうか?」
俺は笑う。




