A班 救助用機体5021 カイル隊員
俺は気付くと瓦礫に埋もれていたが運良く、壁の残りが崩れた天井の崩落から俺を守ってくれたらしい。
怪我は掠り傷くらいで済んだ。
下に流れる水たまりか、瓦礫を流れる雨か、制服が水を含み重い。
身を起こそうとするが、立ち上がるのは無理そうだ。
朝から降り続く雨が、今も地面を打ち続けているのが、瓦礫の隙間から見える。
腹這いの姿勢になり、手を伸ばしそっと動きそうな瓦礫の一つに触れた。
ガラガラッ…
少し見える範囲が広がる。
匍匐の姿勢が辛うじてとれ、慎重に前進して行く。
もう一つ瓦礫を押す。
ガラガラッ…ガラッ…
音を立てながら視界が更に広がり、手、腕、肩と隙間を通し、頭を出す。
そして、空いた隙間から、蛇の様に這い出た俺は愕然とした。
見渡す限りが瓦礫の山だった。
俺達が居た建物が、跡形も無く崩れていた。
立ち上がるとすぐ側の壁が、音を立てて崩れた。
雨で砂ぼこりは立たないが、視界は良好でも何でもない。
寧ろ髪が濡れて落ち、顔に伝う雨自身が視界を塞ぐ。
必死に顔を拭いながら、さっきまで一緒に居たはずの…エントランスに食器を置きに部屋を出た、2人を見つけようと、辺りを見渡すが、1人として立っている者がいない。
「滝中君!橘君!どこだ!返事をしてくれ!」
返事はない。
「滝中君!橘君!どこだ!返事をしてくれ!」
頼む。誰か。
「エリオット!」
Restrictionの管理者であるエリオットを呼ぶ…が同様、返事は返って来ない。
「滝中君!橘君!どこだ!」
声の限りに叫ぶ。
エントランスの方角さえも見失うこの体たらくを恥じ、こんな時の為の声出しだろう!と自分を叱責した。
「返事をしてくれ!」
どこからか『ドシャッ!』っという何かが落ちる音がした。
雨の音がきつ過ぎて、聞き逃しそうではあったが、確かにどこかで聞こえた。
ゴフッゴフッゴオオウェ…ビチャビチャビチャ…
せき込むような音と共に、水音が聞こえた。
崩れた壁を二枚隔てた更に向こう側から…、急いで瓦礫を飛び越え、音がした方へ走った。
走ったと到底言えない速度だったかも知れないが、必死に。
壁は崩れているとはいえ、飛び越えるのに苦労した。
一枚目の壁を突破すると、二枚目の壁の向こうに倒れているのが見えた。
横向きに倒れている様だ。その奥にも1人見えている。
「滝中君!橘君!」
2人だと思った。
乗り越えようと壁に手を掛けた時、下からうめき声が聞こえた。
「滝中君!!」
彼は倒れては居たけれど、無事そうだった。
頭を打っているかもしれないと、揺らさず声を掛ける。
「滝中君!!「滝中君!!しっかりしろ!!」
すると瞼が少し動き、うっすらと目を開けた。
俺はホッとして反対側の2人にも声を掛けようと…した。
エリオットはすでに事切れていると分かる有様で、橘君は地面の赤く染まった水たまりに顔をうずめて、こちらを指さし…息絶えていた。
滝中君の居場所を教えようとしたのだろう、滝中君を示したまま…力尽きたのだ。




