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午前の訓練が終わり、一際賑やかになった食堂で、俺はいつも通り豪勢とは言えない食事を、黙々と口に運んでいた…否、正確には運ぼうとしては何度も止めている。
一向に食事は進んでいない。
訓練終わりの奴らはシャワーを浴びたのだろう、いやに清々しい顔をしている。
午後からの隊員達とは正反対だった。
午前の空いた時間、シムの見舞いに医務室へ行った際、部屋の前でカイルに会った。
この医務室に滝中君の兄が収容されている事が分かった、と言う。
先の戦闘で重症を負った隊員の1人がそうだと。
「いつ分かったんだ?」
「今さ」
名簿を掲げて、自嘲気味に笑う。
「俺の友人の隣に寝てた」
「それは…奇遇だな」
俺は大げさに笑顔を作り笑う。
カイルの友人、藤田聡一は第三部隊の「辛うじて息をしている」1人だ。
という事は滝中君の兄も…?
「滝中君の兄は…まだ意識不明でね。これからどうするか上に報告がてら相談だ。橘君の叔父さんには連絡が取れないし、友人の家族にも連絡が取りたいし…やる事が山積みだ」
カイルがため息をついた。
「そういや友人って、前言ってた奴か?」
「あぁ。犬にお前の名前つけた奴だよ」
カイルが軽く笑う。
以前「お前に助けられた話を友人にしたら『縁起が良い』って、えらく気に入ってな。弟を守ってくれるかもしれないって、お前の名前付けたらしいぞ」と言っていた。
「そいつの弟とか家族はどうなんだ。無事なのか?」
「一度目の襲撃の時、弟は無事だったらしい。犬が…弟を流れ弾から守る様に死んでいたと聞いた」
「一度目?」
「あぁ。運悪く避難先が襲撃に遭ってな…」
カイルが暗い顔をしながら名簿を見せる。
藤田の下に藤田純と書かれていたが、横に死亡と書かれていた。
確か家族ぐるみの付き合いだと言っていたから、弟とも仲が良かったのだろう。
「藤田には…?」
「まだ。被害に遭ったのが一昨日で…その時すでに藤田はベッドの上だったからな」
カイルは告げる事を殊更、気に病んでいた。無理もない相手は重傷者だ、気落ちしたら逝く奴もいる。
「でも、いつかは言わなきゃな」
「あぁ、そうだな」
少しの間を2人で共有した後、俺は気が変わり少し早いが食堂へ行こうと思った。
訓練との間に時間が欲しい。
「見舞いはまた今度にして、訓練前に飯食いに…」
カイルに声を掛けて、離れようとした。
「あ、アンドレア、お前、マックレーンを見つけたら気にかけておいてくれ」
「いきなりどうした」
「この前、あいつの仲良い…、ニックの話をしただろう?」
声を潜めて言う。
「死亡が確認された。だから…」
「マックレーンが何をするか分からない…か?」
カイルは頷く。
「何もなければ良いんだが…」
「そうだな、訓練には来るだろうから見とくよ」
「俺は…色々で訓練に参加させてもらえてないから…頼む」
「あぁ、上官殿と仲良くな」
凄い顔をしたカイルに片手を挙げ、今度こそ去ろうとする。
「そっちも教官と仲良くな」
減らず口を叩く。
「はぁ…あいつに純の事どう話そう…」
カイルの呟きが聞こえた。
「しゅん?」
「あぁ、純粋の純で『しゅん』藤田純」




