本庄 凛(ほんじょう りん)2
今の私は「今の自分」の過去も覚えているのに、自分が…「自分」が死んだ事を思い出していた。
何度も何度も死んで来た。
身体は…違うけれど死んでは生き返り、そして死んで来た。
前の自分が誰だとか、詳細は覚えていないけど…死んだの。
涙が自然に出てきた。
何故、こんな事を繰り返すのか、分からない…。
今朝の夢も、実際はこれまでの人生なのかもしれないけれど、目覚めた瞬間薄れていった。
どうしようもないまま、しゃがみ込む。
戸惑ない涙は、口に入り…しょっぱかった。
ひとしきり泣き、少しすっきりした後、もう一度顔を洗う。
少し目が赤くなってしまったけれど、仕方ない。これ以上時間はかけられない。
父が心配してしまう。
顔を拭いた後、パジャマから洋服へ着替え、洗面台のブラシで髪を解く。
髪ゴムがないので、下ろしたままにする。
髪の毛を下ろしたまま父に会うのは何年ぶりだろうか。
ドアに手をかけ開ける。
全身にぞわっとした恐怖が襲い掛かってきた。
身体がビクつく感覚で、足が止まったが…大丈夫。気を取り直して隣の部屋に移動する。
この恐怖もどうせ、いつかの私が死んだ時のだ。
隣の部屋に行くと、食事は終わっている様だったが、父はテーブルに着いていた。
何も言わず、その前の席に腰を掛けた。
「食べながらで良いから、話を聞いてくれ」
無言で頷いた。
「まずは、小学校の卒業式と中学校の入学式、行けなくて悪かった。お母さんから写真を送ってもらって見たよ」
父は何とか会話の糸口を見つけようとしている様だった。
「長い間…会いに行けなくて…すまなかった」
父と目が合う。
私は、軽く首を横に振った。
「仕方ないよ。お父さんは…隊長なんだから」
「あぁ…自衛隊から引き抜かれた時は、こんな世界になるとは思っていなかったが…」
父が暗い顔をする。
何だか私の方が申し訳なくなってくる。
こんな態度、まるで不貞腐れた子供じゃない。
「お父さん。…助けに来てくれて、ありがとう」
「あ…あぁ。お前が無事で本当に良かったよ…」
眉も目じりも下がり切った笑顔で、こちらを見る。
本当に優しい…お父さん。
「それで、他にも話があるんでしょう?」
「いや…逆に凛が聞きたい事があるんじゃないか?」
そう言えば、怜や誠也はどうなったのだろう。
学校の皆は?
「そう…ね、学校の皆は?」
「この基地内の違う館に居てもらっている。処遇を決めかねていてね。多分、誓約書を書いて貰ってから保護者へ引き渡す事になりそうだが…」
「どうしたの?」
父が悩んだ顔をした。
「誠也君と怜君の保護者に連絡が取れなくてね…。どうしたものかと…」
「本館には呼べないの?」
「どうだろう。部屋は空いているはずだが…2人の身内が居れば引き受けられるが…」
「そう。でも全部上の判断になるのよね?」
「あぁ…」
沈黙が怖くて、私は急いで言葉を紡ぐ。
「お父さんは?この後…」
「この後、司令官の所へ行くよ」
「じゃあ、その時進言してもらえない?2人を保護者が居ない場合本館へって…」
「ああ。そうだな。言ってみるよ。でも凛はまだここから出ちゃだめだよ」
「分かった」
私の返事を聞いて、父が静かに頷いた。
そして、私が食べ終わった後、出ていった。
「いってらっしゃい…お父さん」




