表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/200

???2

いくら考えようとも、何かがはっきり分かる訳でもなく、ズルズルと不安を引き摺るだけだと結論付けて、俺は午後からの訓練に向かう。

制服に身を包み、同期達と集う訓練所は、以前よりも広く感じた。


「これより、訓練を開始する。」


教官が告げる。

まずはいつも通り体力増加メニューだろうか。精神的…体的にも披露している俺達に、本当に必要なのだろうか。こうしてる間に、またどこかが攻撃されて招集がかかれば、疲労した身体で向かう事になるんじゃないか。確かに動かないと身体能力は下がってしまう。だからと言ってずっと動き続ける事は、普通の人間には無理なんじゃないか。

周りを見ると同期達の表情が、そう物語っていた。不信感を持っているのは俺だけではなかった。

だからと言って教官に文句が言える奴は、俺を含めいない。

訓練所を走る俺達は、さぞ死んだ目をしている事だろう。

覇気も気合もなく、ただ言われた事をこなす。

汗は滴り落ちるが、息は上がらなかった。身体は訓練に慣れているんだろうか。それとも何か麻痺しているのか…。


「俺は…人間なのか…本当に人間で…いられているのか」


隣からぶつぶつと声が聞こえる。

その一方で、この組織の定番と言われる掛け声が、走る隊員達の口から自然に叫ばれている。

もちろん俺もずっと同じく声を張り上げる。

しかし、彼の声はそれをすり抜けてハッキリと耳に届いた。

自分は「人間なのか」と問う彼の…思いは分からない訳ではない。

いくつの命を奪ってきたのか、考えるだけで吐き気がする。

しかし、戦闘配備に着けば絶対に身体は()()に沿う。

走れば走れる。銃を構えれば撃てる。人ですら巻き込んでも仕方ないと思い始める。


…俺はむしろ…進んで…。


この前の事が蘇る。進んで撃とうとした…殺そうとした記憶は、延々と俺の精神を蝕んでいる様に思えた。そして、誰にも言ってはいけないとも。

強い後悔の念が襲ってくる。しかし、あの時は本当にどうかしていたんだ。俺は悪くないんだと、あれからずっと自責の念に駆られたり、自分を擁護して他者に責任を見出そうとしたり…している。

時折訪れるこの波は、大抵1人でいる時よりも誰かといる時に起こる。皆が俺を責めている様な…軽蔑と侮蔑を込めた目で見ているような気がする。

それが、俺が自室が一番落ち着く理由だろう。

要するに逃げているのだ。


「よし、次」


教官の声が響いた。

今度は射撃訓練だ。

いくら意識を飛ばしていようと、訓練は続く。

全員が各々銃器を持ち、的に撃つ。実際の的よりもかなり小さい。が、急所を的確に撃つには必要だ。出来る限り速く殲滅を目指す。そうしなければ、犠牲者が増える…最悪の場合こちらが全滅するだろう。

俺は幸運な事にまだミッションを失敗していないが、失敗は良ければ医療室の惨劇…そして悪ければ死だ。


「俺は…人間なのか…本当に人間で…いられているのか」


また、声がする。

持っていたライフルを構え、的を撃つ。


「俺は…人間なのか…本当に人間で…意思があるんだろうか」


ドキッとして後ろを振り返る。

誰が発した言葉か分からなかった。


「よし!次!」


次の隊員と交代する。…すれ違いざまに彼の口が動く。


「お前も()()()人間か?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ