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いくら考えようとも、何かがはっきり分かる訳でもなく、ズルズルと不安を引き摺るだけだと結論付けて、俺は午後からの訓練に向かう。
制服に身を包み、同期達と集う訓練所は、以前よりも広く感じた。
「これより、訓練を開始する。」
教官が告げる。
まずはいつも通り体力増加メニューだろうか。精神的…体的にも披露している俺達に、本当に必要なのだろうか。こうしてる間に、またどこかが攻撃されて招集がかかれば、疲労した身体で向かう事になるんじゃないか。確かに動かないと身体能力は下がってしまう。だからと言ってずっと動き続ける事は、普通の人間には無理なんじゃないか。
周りを見ると同期達の表情が、そう物語っていた。不信感を持っているのは俺だけではなかった。
だからと言って教官に文句が言える奴は、俺を含めいない。
訓練所を走る俺達は、さぞ死んだ目をしている事だろう。
覇気も気合もなく、ただ言われた事をこなす。
汗は滴り落ちるが、息は上がらなかった。身体は訓練に慣れているんだろうか。それとも何か麻痺しているのか…。
「俺は…人間なのか…本当に人間で…いられているのか」
隣からぶつぶつと声が聞こえる。
その一方で、この組織の定番と言われる掛け声が、走る隊員達の口から自然に叫ばれている。
もちろん俺もずっと同じく声を張り上げる。
しかし、彼の声はそれをすり抜けてハッキリと耳に届いた。
自分は「人間なのか」と問う彼の…思いは分からない訳ではない。
いくつの命を奪ってきたのか、考えるだけで吐き気がする。
しかし、戦闘配備に着けば絶対に身体はそれに沿う。
走れば走れる。銃を構えれば撃てる。人ですら巻き込んでも仕方ないと思い始める。
…俺はむしろ…進んで…。
この前の事が蘇る。進んで撃とうとした…殺そうとした記憶は、延々と俺の精神を蝕んでいる様に思えた。そして、誰にも言ってはいけないとも。
強い後悔の念が襲ってくる。しかし、あの時は本当にどうかしていたんだ。俺は悪くないんだと、あれからずっと自責の念に駆られたり、自分を擁護して他者に責任を見出そうとしたり…している。
時折訪れるこの波は、大抵1人でいる時よりも誰かといる時に起こる。皆が俺を責めている様な…軽蔑と侮蔑を込めた目で見ているような気がする。
それが、俺が自室が一番落ち着く理由だろう。
要するに逃げているのだ。
「よし、次」
教官の声が響いた。
今度は射撃訓練だ。
いくら意識を飛ばしていようと、訓練は続く。
全員が各々銃器を持ち、的に撃つ。実際の的よりもかなり小さい。が、急所を的確に撃つには必要だ。出来る限り速く殲滅を目指す。そうしなければ、犠牲者が増える…最悪の場合こちらが全滅するだろう。
俺は幸運な事にまだミッションを失敗していないが、失敗は良ければ医療室の惨劇…そして悪ければ死だ。
「俺は…人間なのか…本当に人間で…いられているのか」
また、声がする。
持っていたライフルを構え、的を撃つ。
「俺は…人間なのか…本当に人間で…意思があるんだろうか」
ドキッとして後ろを振り返る。
誰が発した言葉か分からなかった。
「よし!次!」
次の隊員と交代する。…すれ違いざまに彼の口が動く。
「お前も本当に人間か?」




