橘 誠也(たちばな せいや)4-5
死の描写があります。
苦手な方はご注意ください。
…でも、いつかは終わりを告げる。
俺はまた…死ぬ。
生き続けると思ったか?この生が続くとでも?
そんな訳は無かった。
さすが、親友ポジションだ。なんて今更思うなんてな。
何で忘れていたんだろう。何度も死んでいるのに。
思い起こせば、自覚したのはもう半年前じゃないか。
なのに何で忘れて、希望を抱いて…意気揚々と怜と共に生きれるなんて…。
思ったんだろう…呆れてしまう。
崩れた建物の中で、俺は上半身を起こしながら、そう考えていた。
生きる為にご飯を食べ、未来に思いを馳せた。
何が起こったかなんて理解したくなくても分かる。
この基地の…俺達が居る建物が襲撃されたんだ。
あの化け物に。
黒い影のような塊が、ここを襲った。
壁が破壊され、土砂降りの雨の中、俺は下半身を瓦礫の中に埋もれさせている。
目の先には俺が突き飛ばした怜が、気絶しているのか動きもせず倒れているが、息はしていた。
ガラガラッ…
音がした方を見ると、カイルさんが起き上がってきた。
「滝中君!橘君!どこだ!返事をしてくれ!」
カイルさんから見えないらしい。
そりゃそうか。俺と彼の間には崩れた壁が有って、カイルさんが立ち上がっているから、見えるだけだもんな。
俺は声を出そうにも、出せなかった。
肺に違和感がある。息を吸う事も痛過ぎてできない。
ゴフッゴゥエ!
変な音を立てながら、口から液体が出て来る。血だった。
息を吸う…痛みを堪えながら。それでも肺が膨らんでいる感じがしない。
代わりに喉がヒュウヒュウと音が鳴る。
刺された様な鋭い痛みの感覚が、わき腹に有った。
あぁ、骨だ。骨が出てる…。俺のわき腹から…肉を突き破って。
ガラガラガラ…
溜まった雨が、二階部分を一緒に落とす。
ドシャッ!
俺の目の前に、大量の水と共に上から流れ落ちてきたのは…あの陽気な隊員だった。
あの後、二階に行ってたんだなと…痛みの間で思う。
彼の首は上に向き、俺と目が合っているのにも関わらず、体は首で直角に曲がり、ねじられた形で前の怜に向き合っていた。
どんな首の角度だよ…器用にも程がある…。
彼を眺めている間も、痛みは途絶えることなく続く。
ゴフッゴフッゴオオウェ…ビチャビチャビチャ…
吐き散らかした俺の前は、自分の血なのか隊員の血なのか交じって分からない。
雨の所為でより広がっていく…目の前は真っ赤だ。
そうか、今日だったんだ。
この人が死ぬのも、俺が死ぬのも。
遠くでカイルさんが叫んでいるのも、もう何を叫んでいるかも分からない。
最期に…怜が目を開けてくれないかと、願った。
凛に俺はもう会えない。
カイルさん…怜はそこです。貴方の目の前の…瓦礫の影に…倒れています。
お願いです…助けてください。怜を…そいつは…。
願いが通じたのか、カイルさんがこちらに気付いたのが見えた。
俺は…もう…呼吸が出来ず朦朧として倒れた。
床に溜まっている細かい砂利を含む血が混じった水が、俺の口に流れ込むが、もう拒否反応としての嗚咽や咳は出ず、流れるまま入ってくる。そしてより濃い赤い水として出る。
時折ゴボッという音がするが…少しずつ少しづつ消えていく。
男性 14歳 肋骨骨折による肺挫傷 死亡
「next stage…mission-sideAorB-…」
械的な女性の声が聞こえた後、頭にあの「ファンファーレ」が鳴り響いた。
「あなたは『キャストの 』へ移行しました。」




