橘 誠也(たちばな せいや)4-4
「友人が第三部隊に所属してるんだが…先の襲撃でね。…負傷して入院してるのを見舞いに行った時、探していた滝中君の兄が名簿に載っていて…入院している事を知ったんだ。お兄さんの方も容体が容体だったし、親族を探していた…連絡が行き違った所為で、こんなに遅くなってしまったのは…すまない…」
「こちらの母も、連絡が取れなかったんでしょう…?もちろん父にも」
暗い顔のまま言う怜に、カイルさんが頷く。
「でしょうね…」
「まあ、とにかく…滝中君は明日お兄さんの所に行ってから、本館へ移動してもらう。橘君はどうする?」
「俺も…本館に移動したいです…そういえば、凛は?本庄の事は何か分かりましたか?」
「本庄さんは…。…本庄さんも…本館にいるよ」
俺と怜は目を見開いた。やっと凛の事が聞けた。
「君達を救助してから、本庄さんはお父さんと共に本館にいるんだ。君達の所在が決定していなかったから言えなかったけれど、同じ本館にいくんだ…隠した所で会うかもしれない。…隠す意味がもうないからね」
「なら決まりですね。僕と誠也は本館へ行きます。凛とは会えるか分からないけど…会えるなら会いたいのですが…」
「そこは、本庄隊長と司令の許可次第…だな。僕からも一応、本庄隊長には伝えておくよ。君達が会いたがってるって」
「ありがとうございます」
ようやく、俺達に暖かいモノが蘇った気がした。
凛に会える。「かも知れない。」が付くけど、凛は無事だし、本館に移れば同じ建物だ。会うチャンスは偶然でも、あるかも知れない。すぐに会えるとは限らないけど、希望の様に思う。
コンコンコン
軽いノックがされた。
「すみませーん。ご飯持ってきましたー。食べれますかー」
陽気な感じの隊員が返事も待たずにドアを開け、入ってきた。手には器用に三人分のトレイを持っている。
「こちらにカイル隊員もいらっしゃると聞いてたので、持ってきました」
軽やかな足取りで、机に三つ置いていく。
「椅子もう一脚要りますねー」
そう言って、外にある飲み物が載せられた銀色のトレーラックを引き入れた。
最初からそれを部屋の中に入れてくれたら、各自で取るのに。と俺達3人は同じ事を思ったと思う。
でも、明るいこの人の声は、疲れ切っていた俺の気持ちを和らげてくれた。
そう、人の死を目の当たりにしたあの日から、本当はよく眠れていなかった。
あのシーンが夢に出て、うなされて起きる事ばっかりで、休まらなかった。
今日倒れたのは身体を打ち付けた事や、緊張だけでは無く睡眠不足もあったんだろう。
それに…出されたご飯を食べれたのも、最初だけだった。
時間が経つにつれて、麻痺していた頭が冷静になったのか、食べ物が受け付けなくなって、食べてもすぐに戻していた。
ぐぅ…
腹が鳴る。俺の腹。
「お腹減ったろ、滝中君もこちらに座って食べなさい」
カイルさんが怜に席を譲り座らせた。
向かい合った怜と俺は、手を合わせた。
「いただきます」
生きる為に…「いただきます」だ。




