橘 誠也(たちばな せいや)4-3
カイルさんによると、ここにいるのはもう俺と怜だけになったらしい。
先輩達が帰宅する前でも、ほぼほぼ帰った後だったらしいが、隊員による殺害が起こったから、予定を早めたと言う。
結局は「誓約書」を交わすことで落ち着くなら、もっと早くに決まっていれば、篠本も死なずに済んだのにと悔やむ彼の顔を見て、それでも「この先の事」を考えると、これ以上辛い目に合う前に逝けたのはいっそ…幸運だったんじゃないか。とも思ってしまう。
俺みたいに…あの職員室の様な残酷なシーンを、見ないとは限らない世界になってしまった。
これから先も、巻き込まれない保証がないんだ…。
「君達も…明日ここを出る予定だ。ただ…」
カイルさんが俺を見た。
「橘君…君の叔父さんなんだが…」
「叔父がどうかしましたか」
「…連絡が取れない…」
最悪の予想が頭に過ぎった。
他の場所でもアレの襲来が起きていたら、それに巻き込まれていたら…。
心臓が速く打つのを感じた。妹も行方不明で…叔父も行方不明に…となると…。
俺の身元引受人はいない。
「なので、他に親戚や当てはあるかい?」
「いいえ…俺の親戚は叔父が最後です」
「そうか…君さえよければ、僕の所で預かっても良いんだが…どうする?」
真剣な顔で見てくるカイルさんに申し訳なさが勝ち、「迷惑をかける訳には…」と丁重にお断りを入れようとすると手を挙げて遮られた。
「迷惑とかではないよ。ただ住む場所が変わると言うだけだ。叔父さんと連絡が取れ次第、そちらに行ってもらって構わない。それに…」
今度は机の横で立ったまま、明後日の方向を向いている怜に目をやる。
「滝中君とも一緒の方が…」
「怜と一緒?」
「あぁ、滝中君は本館の方に移動する」
「どうして…?」
怜の方を見ると、立っていた怜がこちらを向いた。
「腹違いの兄が本館にいるんだ。父の前妻の息子さん…」
「そうなのか…?」
両親が離婚してから父親とは疎遠になっているとは知っていたが、兄が居たとは知らなかった。
「うん、まぁ…誠也が知らなくて当然だよ。僕がお腹にいる時に離婚してるし、その後一切接触はなかったしね…。僕ですらここに居ることも知らなかった」
「滝中君のお兄さんは第三部隊の人だと、昨日分かったんだ…」
「そうでも…重体らしいんだ。だから、こっちが逆に身元引受人みたい。お兄さんは母親も弟も先の襲撃で亡くしてるらしくて…」
「弟?」
「父は母と離婚した後、元鞘に戻って…弟が生まれたらしい」
少し嘲笑した笑いを浮かべながら言う…。
「もう居ないみたいだけど…ね」
怜の頬にまつ毛の影が落ちた。




