橘 誠也(たちばな せいや)4-2
目を覚ますと、ベッドの上に寝かされていた。
何か色々夢を見ていた気がするが、よく思い出せない。
ベッドの横に人影がみえた…怜だ。
「あ…気が付いた?」
この前もこんな事があった気がする、…いや、実際エントランスでこんなやり取りをしたっけ。
あの時も読んでいた本を片手に、俺を覗き込んできた怜は、少し青白かった。
「お前…顔色悪いぞ」
喉が渇いているのか、声が出にくい。
掠れた声でそう言う俺に、怜は悲しそうに笑った。
「誠也ほどじゃないよ」
雨の激しい音が部屋の中を埋め尽くす様に、ガラス窓を叩いた。
「雨…まだ止んでないのか…」
「そうだね、誠也が気を失ってからそんなに経ってないよ」
「アレからどれくらい?」
「4時間くらいじゃないかな」
「結構経ってんじゃん…」
俺は寝返りを打ち、怜の方に身体を向けた。
水の入ったペットボトルをくれる。
身体を起し受け取ると、怜はベッドの端に腰を下ろし、俺が気絶している間の事を話してくれた。
「先輩達…明日予定だったけど、さっき保護者の人達が来て帰ったよ。学校でもここでも色々あったし、これ以上は…って。カウンセリングの話とかもしてたみたい。黒いアレの話は口外禁止で、誓約書みたいなの書かされてた。僕も書いた。起きたら誠也の分も持ってくるから、書いて欲しい。って」
「そうか…挨拶くらいしたかったな…」
「先輩達もそう言ってたけど、…また会えるよ」
「そうだな」と相槌を打ちたかったが、言えもせず頷きもできなかった。
外の雨の音がまた強くなった。
コンコン
隣から遠慮がちなノックの音が聞こえた。
「見てくる」
怜が立ち上がり、隣の部屋に来客を確認しに行った。
ぼそぼそとした声は聞こえるが、誰の声か分からない。雨の音が強すぎた。
このまま降り続けて、あの黒い影も流れ切れば…こんな世界は終わりになるんじゃないか、なんて思う。実際はアレが雨に強いのか、弱いのかさえも知らないけど。
「人間の方が先に流れるか…」
ため息が出た。
「誠也、カイルさんが…」
ドアを開けながら怜が声を掛ける。その後ろにはカイルさんが居た。
「調子はどう?マシにはなったかな?」
「はい、少しマシになりました。すみませんでした。運んでもらって…」
「いや、良いんだ。こちらこそ…すまない。謝っても…許される事ではないが…君達をも巻き込んだこちらの責任は重いと考えている。本当にすまなかった」
カイルさんが頭を下げる。マックレーン隊員とは同じ所属だったらしい。
顔を上げてもらい、本題に入る。
説明と共に誓約書を渡された。
「これは僕らの組織へではなく、国への誓約書になる。破った場合、それ相応の処罰が下る事を肝に銘じてくれ」
俺は真剣な眼差しに、頷くしかできない。
それに…拒否権もなさそうだった。




