篠本 麻衣(しのもと まい)
私は彼、滝中怜君が好き。
始めてみた時から、ずっと好き。
だって、本当に運命だと思ったの。
中学の入学式の日、桜の花びらが舞う校庭で猫と戯れていた彼を見た時、なんて美しい人がいるんだろうって思った。
茶色の髪が薄く光を受けてキラキラして、猫に向ける笑顔も優しくて、女の子の様に白い肌も輝いて見えた。
そこだけが別世界の様だった。
ぼーっと見てしまった私に気付いた彼が、少し会釈をして微笑んだ後、受付に行く後ろ姿に付いて行った。
入学者の印のリボンを上級生がつけてくれている時も、式の会場の体育館に入る時も、隣には座れなかったけど、席に座る時も式中もずっと目で追った。
軽く会釈をしてくれた時の微笑んだ顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
式が始まるまで楽しげにしゃべっている3人があまりにも眩しくて、私もその中に…友達になりたいってすごく願った。
怜君と私は同じクラスで、他の2人は別のクラスになったのもチャンスだと思ったわ。
でも、ホームルームが終わると彼には人だかりが出来ていて、その日は一言も交わせなかった。
正直、本庄さんは苦手だった。とにかく明るいし、はきはきと話す感じが私とは全然違って、教師にも受けてるし友達も多そう。それだけでも嫌なのに何だか怜君とも良い雰囲気で、イライラした。
2人の側にいる橘君も何を考えているか分からない。
基本、怜君と本庄さんとしかしゃべらないし、男子達ともそんなにつるんでいない。私と同じで友達少ないのかと思えば、全然いろんな人とも知り合いみたいで一匹狼的な?好きで一人でいるって感じだった。
怜君と本庄さんは別にして。
多分、橘君…本庄さんの事が好きなはずなのよ。見てたら分かるもの。でもそこはウジウジしてるの。
顔も同じクラスの男子に比べれば、イケてる方なんだからドンドンアピールとかしちゃって、掻っ攫って行って欲しい。って思った。
なのに、3人仲良くしてるの。…イライラする。
でも、私も彼の側に行きたい。気持ちが高まるのを自覚した時、このままじゃダメだと決心した。
まずは私に気付いて貰わなくちゃ。1人の女の子として見てもらおう。
それにはまず、地味な外見を変えた。
髪の毛を少し脱色して明るくして、スカートも勇気を出して短くした。
先生には注意されたし、親にも怒られたけど関係ない。
私は彼が好き。振り向いて欲しい。
彼が部活を始めたら応援にも行った。
マネージャーになりたくて入部しようとしたけど、人が殺到したらしくてマネージャーにはなれなかったし、代わりに女子サッカー部へって言われたけど、怜君が居ないなら意味がないって辞退して、練習や試合を毎日の様に見に行った。
毎日が楽しかった。
マネージャーの先輩達に睨まれても、先生や親に怒られても。
ライバルに負けたくなくて、化粧やダイエットで頑張った日々が。
そしてあの日、怜君が蹴ったボールが私に当たって、怪我をした日から彼の目に入れるようになって、お話して貰えるようになって…この前だって…変な黒い影から逃げる時手をつなげて…。
世界はこんな状況だけど…幸せに感じて…たのに…。
こんなの…有り?




