橘 誠也(たちばな せいや)3-5
「マックレーン!止めるんだ!」
悲鳴を上げ、へたり込んだ先輩達の前に庇う様に立ち、カイルさんがマックレーンを止めようとするが、彼は俺を片手で押さえたまま、銃口を皆の方へまだ向けていた。
俺から撃たれた隊員の詳細は分からないが、ぴくりとも動かない所を見ると…即死なのかも知れない…と思う。
次、いつ怜に向かって銃弾が放たれるか、先輩達が撃たれるか…考えるだけで胸が痛んだ。
そして、その銃口は俺に向けられる事も…。
鼓動が速くなるのを抑えられず、今にも狂いそうだ。
「マックレーン隊員、君は何をしているのか、分かっているのか?」
柳さんの冷静な声が聞こえる。
「柳隊長…ニック…ニコライを…武器も持たせず殲滅隊として送り込んだのは…本当か…?」
彼の俺を押さえている手が、震えているのを感じる。
「仕方ないだろう、あいつに武器を持たせれば落としてくるじゃないか、それに…無能を置いておくわけにもいかんし…無駄に殺す事も出来ん。一匹や二匹倒して死んでくれれば、有意義な使い方だったと思わないかね?我が部隊の者達も、間ぬけを働けば『こうなる』と学んだ事だろう」
ほくそ笑む様な、軽い感じの柳さんの口調はマックレーン隊員を煽っている様に感じた。
「柳隊長、子供が人質です。あまり刺激を与えないでください」
カイルさんの声が微かに聞こえた。
「見せしめか…」
「そうだ。必要だろう?君には分からないだろうが…。それとも何かね、クビにして『はい、終わり』とでも?…ふんっ…無理だね。…分かっているだろ、最後に会った時の、あいつを見ていれば」
マックレーン隊員の拳にギュッと力が入る。
ニコライという隊員とこの人は仲が良かったのだろうか…。
軽薄そうに笑いを含んだ柳隊長の物言いは、何だか…凄く嫌だった。
「あいつは覚悟を決めていた。それに…君の隊のお仲間が撃たれかけたんだろ?あいつのミスで。1人のミスは大勢の命を奪う可能性が有る」
誰もが沈黙していたが、その瞬間、床に倒れていた隊員がマックレーン隊員を撃った。
彼は腹に銃弾が当たったものの、生きていた。
今度はマックレーン隊員が倒れ、俺は彼の重圧から解放された。
倒れ込み、胸を押さえている彼に柳さんが近付く…そして、俺の横で銃を構え撃った。
マックレーン隊員の身体は大きく一度跳ねた後、…ピクリとも動かなくなった。
「片付けろ」
後ろに控えていた隊員達に命令し、その場から立ち去ろうとする柳さんに、誰も声がかけられなかった。
震えている先輩達を部屋に返そうと、カイルさんが優しく手を添え歩きだした。
あの陽気に見えていた隊員の人も、粛々と他の隊員と共に死体を片付けている。
俺は…怜と共に立ち尽くすばかりだったが、怜がハンカチをそっと差し出し、ほほを指さした。
何か付いているのかと、拭う。
赤い血だった。
…彼…マックレーン隊員の…。




