橘 誠也(たちばな せいや)3-4
俺は叫びながらエントランスに戻った。
戻ってしまった。
銃を持った隊員が、俺を追いかけて来ないはずも無いのに。
「逃げろ!皆!逃げろ!」
大声で叫んだ。
追いかけて来る隊員が、俺の襟足を掴んだ。
髪の毛が引っ張られ倒される。
床に身体が打ち付けられ、衝撃で呻き声が出た。
「止まれ!止まらなかったらコイツも撃つ!」
俺に馬乗りになった隊員が叫んだ。
全員の足音が止まった気がした。
俺は肩を背中側から押さえ付けられ、下半身は横向けになった状態のまま、乗られていた。
力が強くて痛い。
首が辛うじて動かせるくらいで、後はびくともしなかった。
横目で隊員の顔を見ると、目が血走っている様に感じた。
話が通じ無さそうだ。
「そのままこっちへ来い」
怜と先輩達に言っているのだろう。
「1、2、3、4、5…6、さっきの部屋に1人いたから…7…15人いたはずだ。後の8人はどこだ」
ゴリッと頭に硬い物が押し付けられた。
「誰でもいい、答えろ」
「…ひ…1人…男の子1人は…昨日上の人ぽい人が…連れて…、後の7人は…知らない…です」
先輩の声が震えている。
「あ…明日帰れるはずなのに…」
1人が泣きながら、呟いているのが聞こえた。
男に押さえられながら、申し訳なく思う。
戻るべきじゃなかった。
怜や先輩達を危険に巻き込んだ。
でも、自分の部屋にも隣の部屋にも行けず、まして隊員の向こう側にあった反対側の階段に、走る事も出来なかった。
どうすれば良い…。
咄嗟にあの陽気な隊員の顔が頭に浮かんだ。
常駐してるはずのあの隊員。
名前を聞いとけば良かった…、知っていたら今、叫んで助けを求める事が出来たのに。
だけど、もっと騒げば…騒ぎを聞きつけ来てくれるんじゃないか、と。
思いっきり息を吸い、叫んだ。
「カイルさん!柳さん!誰かー!」
「…柳?お前…柳隊長の知り合いなのか?」
血走った目の隊員が顔を近付けてきた。
頭に突きつけられた銃が、更に強く押し付けられ頭が痛い。
「もしかして、お前か?…上層部の…」
俺の上に乗った隊員が苦々しい顔で言いかけた時、銃声が近くで鳴った。
思わず目を瞑ったが、撃たれたのは俺では無く、血走った目の隊員だった。
「その子を放しなさい」
陽気な隊員の声が響いた。
目だけで周りを見ると、怜と先輩達の近くに声の持ち主である陽気な隊員と、カイルさん、柳さんと他何人かの隊員がいた。
「その子を放しなさい、マックレーン隊員」
カイルさんにマックレーンと呼ばれた俺の上に乗っている隊員は、撃たれたがかすり傷を腕に負っただけで、怯みもしない。
「お前らの指図は受けない」
マックレーンはそう言って、俺の頭に突き付けていた銃を皆の方へ向けた。
パンっ
銃声が耳元で鳴り、耳がキーンとする…。
反射的に目を瞑ってしまったが、反対側の耳に悲鳴が聞こえた。
「怜!!」
顔を上げると、怜は無事だった。
が、代わりにあの陽気な隊員が床に倒れていた。




