橘 誠也(たちばな せいや)3-1
柳さんは会議で俺達の処遇が決まるまで、当分時間がかかりそうだという結論が出た事を教えてくれた。
「すまないね。色々と聞いた話が関係していて…」
と、にこやかに手を振って去って行った。
その後ろに何人かの隊員の人達が居て、1人後ろ手に縛られている人が見えた様な気がしたけど、深く追及出来る空気でも…する気もなかった。
横を見ると少し険しい顔をした怜が居た。
「どうした、怜」
「…あの人…」
「知ってるのか?第二の隊長って言ってたけど」
「…いや、何か…嫌な気がしたんだ…僕らあんまり関わらないだろうけど…関わらない事に越したことはないって感じがする」
柳さんの姿が見えなくなり、俺は背もたれに全体重を預ける様にもたれた。
「…まあ、そうだな。俺らも…早く帰れたらいいな」
「あぁ…」
「そういえば凛は?会ったか?」
今日ずっと会ったか聞いている気がするが…。
「降りてからは会ってない…多分ここにもいないと思う」
「やっぱ親父さん所かな」
「多分」
沈黙が流れた。
何か話したい気持ちが出てきた俺は、話を続ける。
「…今日…ずっと篠本にくっ付かれてたな」
ビクッと怜の肩が動いた。
「あまり…甘い顔してると…知らねーぞ」
「分かってる…でも、どう振り払えばいいのか分からなくて…。あんまり乱暴な事はしたくないんだ…」
「お前はそれで良いのか?」
「…本当はよくない。分かってる」
「凛の気持ちも?」
俺はジッと見つめた。
合っていた目を逸らし顔を背ける怜に、凛の気持ちを知っていると確信する。
「そうか、なのに好きでもない女にくっ付かれても払えないのか…」
俺はため息が出た。
怜自身も凛が好きなはずなのに。
優しすぎるのも駄目だな…と。
「さっきも…食器を片付けに出たら…ドアの前に立ってたんだ。斜め前の部屋らしくて…」
「ストーカーかよ!」
俺はびっくりして勢いよく起き上がる。
「だから、さっき篠本もここに泊まる事を知っていたのか…」
肘を膝について「考える人」の様な体勢で聞く。
凄く考えている様な体勢だな、と不意に思うが…まぁ考える事が多過ぎる気がする。
どれも他者や大人からしたらくだらない事なのかも知れないけど、俺らの年齢ならそれが「世界」なんだ。
飯の事、恋愛の事、友達の事、明日の事…。
「この先どうなるか分からないんだから…お前、ちゃんと…」
「分かってるよ。…誠也こそ…考えてるのか?」
「俺は…いっぱい考えてるよ。…お前の事もな」
逸らしていた顔をこちらに向けて、怜の目が俺をジッと見つめた。
「嘘つき」と言われている様な気がする。
俺は曖昧に笑い、部屋に戻ると告げ立ち上がった。
もしかしたら、怜にも俺の気持ちはバレているのかも知れない。
そう思うと…襲ってくる居心地の悪さに我慢出来なくなった。




