柳 栄一(やなぎ えいいち)
「本日の殲滅作戦、及び救助報告を述べます!」
敬礼をしながら、第一迎撃部隊A班の隊員が声を上げる。
「簡潔に言いたまえ」
「はっ!エリア24で発生した攻撃対象は殲滅、救助対象者15名を保護。3名が死亡。救助者は1名を除き全てRestrictionに保護しております」
「死亡者の詳細は?」
「はっ!教師1名と生徒1名は攻撃対象により死亡、生徒1名は死亡した教師により射殺されました」
「銃の出所は分かったのか?」
「はっ!先日報告に上がっておりました、第二迎撃部隊所属ニコライ・フォードの物と一致しました」
「そうか。ご苦労、下がりたまえ」
「はっ!失礼いたします」
来た時同様、敬礼をし回れ右をして去る。
私は席に着いた面々を見渡す。
司令官、並びに副司令官。そして各隊の部隊長が席に着くこの会議室で、空席が一つだけあった。
第一の部隊長、本庄賢吾の椅子だ。
「本庄隊長は別件に対処してもらう為、離席している」
会議が始まる直前に、織田司令官が離席理由を伏せて告げた。
が、私は知っていた。
自分の娘を助けるために、本庄が救助要請を受けた事を。
規則違反の話だが…司令はどうするおつもりなのか。
席を外している旨だけで処罰の話はなく、会議は現在も滞りなく進行している。
今の議題は、救助時に発覚した教師による生徒殺害。
その際使用された銃が、折り悪く私の隊の者の所持物だった。
しかも、殊更運悪く、生徒の手にも渡り第一の隊員に向けて発砲されたと言う。
何という失態。これでは本庄の規則違反を追及できない。
相手は証拠もない上に、たまたま娘が巻き込まれていたのだとでも主張されれば、それが通ってしまうだろう。
反対にこちらは照会され、確定している。
今、本庄の規則違反を論えば、司令官への心象が悪くなる。
それでなくても本庄は覚えがめでたく、可愛がられている印象がある。
「処分は…第二の柳隊長に任せる」
副司令がこちらを向いた。
「承知いたしました」
失態を犯す者は、他者の足手まといになる。そして隊員の替えは居る。
続く戦闘で…人員不足も否めない…が、見せしめも必要…。
処分が一任された…という事は…そういう事だ。
私は頭を下げた。
会議終了後、急いで隊員にニコライの所存を聞く、第一の同期の所にいると言う。
馬鹿め。同期とてそう易々となれ合うなといつも言っているのに…。
私は幾人かの隊員を引き連れ、件の部屋へ行きドアを叩く。
ニコライを連れ出すと、部屋の主に嫌みの一つでも置いていこうと思ったが、やめた。
一緒に居たマックレーン隊員の顔が思い詰めている気がしたので、敢えてニコライの不穏な未来を告げるのみにした。
彼が何かをする事に期待して…。
しかし、マックレーン隊員は座ったまま、固まるだけで何もしなかった。
男気のある奴かと思ったが…拍子抜けした私は、さっさとドアを閉めた。
連れ出された先に見えるニコライは泣いている様だった。
己の運命を悟っているのだろう。
「シケタ面しやがって」
吐き捨てるとRestrictionへ連行する。
一階は生徒達が詰めているらしいが、二階三階にはまだ空きはあるだろう。
ニコライへの処罰を試案しながら、引きずられる奴の後ろを軽い足取りで歩いた。




