橘 誠也(たちばな せいや)2-3
カイルさんに連れられた場所は、目立つ大きな建物が並んでいる基地内でも、中くらいの大きさの建物だった。
エントランスを過ぎると、番号が付いた部屋が多数あった。
その一つに入ると、学校机よりも少し大きめの机が一つと椅子が二脚、電気はやや薄暗い印象のこじんまりとしていた。
娯楽性も生活感もない、話を聞く人と聞かれる人とのだけの部屋。
そんな感じだった。
入ってきた側のドアとは違うドアがあるのが…隣の部屋があるのが、不安をまた掻き立てた。
「そっちに座ってくれ」
カイルさんが指さす方に座る。
「不安そうな顔をしているね。…機内で僕と篠本さんが話して居た時から特に。…何か言いたい事…言わなきゃいけない事でもあるかい?」
さっき建物に入る時、入り口から持って来たノートに俺の名前と何かを書きながら、話すカイルさんのセリフに思わずドキッとする。
そして、動揺を隠しきれない俺に、思わず笑みがこぼれた感じで笑う。
「まず、君の友達もこの建物に居るから安心して欲しい。さっきの子達も体育館に居た子達もだ。…ただ…皆が皆、早くは返してあげられないかもは知れない。事が事だけに…分かるだろ?」
「どうしたら早く帰れますか」
カイルさんは少し驚いた顔をした。
「早く帰りたいかい?」
「ここは落ち着きませんから」
「そうだね、落ち着かない様な色にされているからね」
俺の肩がビクッとなった。
「心配しなくていい。君たちの様な一般者の為の部屋と言う訳じゃない。今回は都合でここになったんだよ。本当は一般の人なんて入れる場所じゃないんだ。この基地自体が…ね」
「なら…なんでここに?」
「今回は救助要請が有ったからだよ。そしてその対象者が子供だった。保護者が来るまでちゃんと守らないと…助けた意味ないでしょ?後、さっきも言った通り君達が体育館に行くまで何をして何を見たか…ちゃんと聞かなきゃならないんだ。誰が誰と一緒でどう行動したか。中には対処しなきゃいけない事柄も出て来るかも知れない。そうであって欲しくないけど…」
カイルさんはちょっと悲しそうな顔をする。
「で、君の話を聞こうか。橘君」
笑顔を向けるカイルさんの手元のノートには、いつ調べたのか、俺の名前だけでなく住所や血液型まで書かれていた。そして…「先月、両親共に死亡 妹行方不明。」と…。




