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橘 誠也(たちばな せいや)2-1

体育館に避難した俺達は、渡部の信じられない行動の後、救助隊に助けられた。

機体の中は広く、生徒5人と隊員の人達が居ても窮屈ではなかった。

側面に準じて、向かい合って置かれている長い椅子…これも二脚というのだろうか。

椅子に横並びで座っていく。

一方には俺・凛・怜・篠本・岡の順で座り、もう一方には隊員達が座った。

機体の前付近にあるドアは、操縦席に続いているんだろう。


俺は校門や職員室での事、理科室での事…。

話した方が良い事は分かっているのに、言い出せずにいた。

銃関連の話が一通り終わると、救助隊のカイルさんはドアの向こうに去って行った。

他の隊員は話をせず、飛んでいる音しか聞こえない。

誰一人話し出す雰囲気ではなく、俺もきっかけが掴めないまま、黙り込む。


「誠也…放送ありがとね」


隣から小さな声がした。軽く首を振る。

凛の方へ向いた時、視界の端に怜が見えた。

篠本を腕からはがすのは諦めたらしい。

俯いたまま、こっちにまで溜息が聞こえる様だった。


「職員室の事とか言わなくて良いのか…な」

「アレは…そうだね…わからないや…」


凛も暗い顔をする。

一緒に行動してた先輩達とは違う機体に乗ったから、一緒に話す事も出来ない。

どうしたらいいのかと考えている間に、カイルさんが戻ってきた。


「疲れているだろう。何か飲み物でも…」


カイルさんは他の隊員に声をかけ、飲み物を配ってくれる。

ちょっとしたお菓子までくれた。

そして、この時になってやっと、怜は篠本から解放された。

機体内に、お菓子の包みの開ける音や微かな噛む音が広がる。

ふと正面の隊員達をみると皆、食べている俺らを見て少し微笑んでいた。

心配をしてくれていたんだろうか。

カイルさんが怜の前の位置に座った。


「食べながら聞いて欲しい。…基地に到着したら各々聞き取りや手続きをしてもらう。その後、保護者に連絡して帰宅してもらう事になる…」


そう言いながら、岡にちらっと目線をやったのが分かった。岡は普通に帰れるのだろうか。


「見た所怪我はなさそうだが、痛いとか気持ち悪いとかはないかい?」


ほぼ全員が頷く。が…篠本だけが口を開いた。


「あのぉ、怪我とかは無いんですけど…学校に居た黒いアレって何ですか?気持ち悪かったんですけど…、世界中で何か…いるんですよね?」


カイルさんや隊員達の空気が変わった。


「教えてくれてもいいじゃないですか…こっちは巻き込まれたんですよ?」

「お、おい篠本さん…」


変わった空気も読まずヒートアップし出す篠本を、岡が止めようとするが…止まらない。


「本当ならあなた達がやっつけるんじゃないの?貰ってんでしょ、お金!」


篠本の言葉で、隊員達はムッとした顔になっているが、やはり大人でキレたりはしなかった。

が、カイルさんが立ち上がって篠本の前に立つ。


「金は貰っている仕事だからな。でも、命を懸けてやっている。聞くと組織の規約に当てはまってしまうが…君は命がかけれるか?それでなくても…君達が何をし何を見たかで、今の状況は()()と変わってくる」

「帰れなくなるかも知れないって…事?」


勢いを無くした篠本に、険しい顔をしたカイルさんが頷いた。


「あぁ…」

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