橘 誠也(たちばな せいや)7
ギュッと目を閉じていた。
嫌な事が起きているかもしれないこの状況に、俺は酷く怯えていた。
無事で…いて欲しい。
そっと目を開け…下を見る。落ちた彼女の周りに他の3人が集まっていた。
1人が彼女を抱えている…。
身体が震えた。
カーテンを握りしめたまましゃがみ込み、涙が…出た。
「だいじょーーーぶーーーー」
下から声がした。
顔を上げ下を覗き込むと、抱えられた子が手を振っている。
他の3人も笑顔で上を向いていた。
俺はホッとして…尻もちを付き…また涙が出た。
「良かった…」
袖で涙を拭き立ち上がる。
今度は俺の番だ。
腰にカーテンを巻き、壁に足を着けた。
手慣れた様に、スッスと下りていく。
そして…踊り場に足を着けた時、頭に一つの疑問があった。
どうして俺はこんなにスムーズに下りれたんだろう。
ボーイスカウトに参加やキャンプすらした事がないのに…。
それに下りる方法の…説明も、何故かスムーズにできた…。
不思議に思ってると、彼女達に声をかけられた。
「君、橘君でしょ。よく滝中君達と一緒にいる…」
最初に下りた子が僕を知っていると言う。
よく聞けば一つ上の先輩だった。
敬語をいきなり使うのも何か気恥ずかしく感じ、頷くだけにした。
「ありがとうね、君が居たから下りれた」
そう微笑んでくれる。
急に無口になる俺…。先輩ってどう接したら良いんだ?
そんな反応が薄い俺を見て彼女達が笑う。
「と…とにかく、体育館へ…」
何故か、しどろもどろになる。
「そうね、でも…」
1人が暗い顔をした。
「下りる時見えたんだけど…外に黒い何かがいたの…橘君が言ってた黒いのってアレの事かなって…」
俺は早く下りる事しか考えていなかったので、外を見ていなかった。
「でも、凄く大きいの…校舎より大きいんじゃないかな。…しかも…遠くの方には…凄い数居たと思う…家とか…どうなってるか…分からないくらい…」
そう告げる彼女以外の顔から、血の気が引いた。
多分1番青ざめたのは俺だろう。
…アレが…居る?…しかも…大量に???
目が回ってよろけた。
「え…っと…教室に入る…人間より少し大きめな…?」
彼女は首を振る。
「本当に大きいと思う。校舎が邪魔であまり見えなかったけど、丸っぽい黒い陰に長細い何かが生えてた…アレは足なのかな…怖くてちゃんと見てなかったけど…何かいたの…、で…動いてたし…虫の行列みたいに集団であっちに向かって歩いてた…」
彼女は体育館の、斜め反対の方角を指した。
「しかも…校舎を跨ぐ様な感じのも見えた…。ねぇ、体育館まで…無事に行けるのかな?」
彼女の目が潤んでいた。
俺は唇を噛み締めた。
が、どうせここに居てもいつあの理科室のが来るのか分からない、しかもさっきの破壊音が何かも分からない。分からない事だらけだ。
ならば…。
「とにかく体育館まで行こう。行けば助けは来る。」
彼女達は頷いた。




