橘 誠也(たちばな せいや)6
下りる順番は女子同士で決めてもらった。
まず、下り方について…カーテンを持ち、壁に足をつけて壁伝いに下りていく方法。
カーテンを腰に巻き、左手で掴み、右手で緩ませながら下りていく方法。
結び目を足場にして足の曲げ伸ばしで下りていく方法。
その三つを説明した。
各々が下りやすい方法で下りてくれればいいと思った。
「最後の下り方…尺取り虫みたいね」
1人が笑った。
確かに。とその場が緩んだ。
俺は括り付けられているカーテンと鉄線を握りしめながら、下へ下りていく一人目に声をかける。
「頑張れ、もう少しだ。大丈夫…」
同じ言葉を何度も繰り返す。
ゆっくりと確実に下りていく。彼女の震えがカーテンから伝わってくる様だ。
「頑張れ…下は瓦礫だから気を付けて。崩れるかもしれないから、一旦…そう踊り場の方に…そう…。頑張れ…階段がありそうな所に…。そう…。後少し…」
踊り場の一段下の階段に足を下ろした。
力が抜けたのだろう、踊り場の方に倒れる。
自然に拍手が起きた。良かった。無事下りれた。
「大丈夫か?」
声をかける。
片手を挙げて彼女が答えた。
「崩れそうだとか不安定とか感じないか?大丈夫そうか?」
彼女が起き上がって頷く。
「よし、じゃぁそこで待っててくれ」
一人目が無事下りれた事で、気持ちに余裕が出来たのだろう、残りの2人も揺れるカーテンに苦戦はしたものの無事下りて行った。
一人目の彼女がサポートしてくれたのも大きいだろう。
四人目の女子が下りようとした時だった。
一際大きい音と破壊音が聞こえ、校舎が揺れた。
彼女達の悲鳴と瓦礫が崩れる音がした。
そして横にいる四人目の…落ちそうになる女子を間一髪支え、固まる。
衝撃は一瞬で終わったが、心に受けた衝撃が、動揺がすごかった。
下の彼女達も身を寄せ合い固まっている。
音の方角は…黒い影が居た奥の階段側に感じた。
何があったか分からない。それが一番恐怖を引き起こす。
パニックになったら…終わりだ。
俺は深呼吸した。
腕の中にいる子もそれに気づいたのか、同じリズムで深呼吸した。
「大丈夫。慌てず下りて行こう」
女子が頷き、カーテンに手を掛けた。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
自分にも言い聞かせる。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
四人目が真ん中まで下りた時、布が破れる音がした。
カーテンが破れた訳ではない。
彼女の服が飛び出ている鉄線に引っ掛かり、破れたのだ。
「大丈夫か!?」
声をかけたが…彼女は引っ掛かりが取れない様で、もがいている。
「落ち着いて!」
焦る彼女は…カーテンから手を放してしまった。
下の3人が小さな悲鳴を上げた…。
ドサッと落ちる音が聞こえた。




