エキストラー後編ー
また、僕は僕と認識した。
今、起きたのだと思う。
そして、また、僕は死んで14歳として居る。
体には「前回の痛み」はないものの、微かに腹の中の何かが死因になったのだろうな。という感覚が残っていた。
僕自身にハッキリとした前回の記憶はない。
残りカスのようなものが感じ取れる程度だった。
また、部屋のようだ。
清潔感のある部屋だった。
何も…ごみ一つ落ちていない。
部屋を作るとしたらこうだろう。というベッドとクローゼットと少しばかりの飾り。
「模範的な」部屋。
僕の趣味や好みなど一切感じさせない、馴染みもない空間だった。
聞きなれないアラーム音が鳴り響き、僕はいつも通り止めた。
そう、いつも通りのように止めたのだ。
初めて見るように感じているのに…。
僕は意識することもなくベッドから降り、ドアを開け階段を下りていく。
目に入るもの全てがよく見るが実感としては「馴染みのない」内装であるのに、僕は慣れた歩き方で歩き下る。そして白いドアを開けた。
「おはよう、顔、洗ってらっしゃい」
笑顔で僕に言う女性…母親だ。
手には作り立てであろう、朝食を乗せたトレーの様なものを持っている。
僕は頷いて洗面所へ向かう途中に、何か違和感を感じた。
が、体は勝手に動き洗面台へ向かう。
顔を洗い歯を磨き、戻ると…母の体は半分無かった。
持っていた朝食もあっちこっちに飛び散り、皿やグラス、のっていたはずのパン、野菜も散り散りに床にまき散らされていた。母だった肉片に交じって。
ふと、足元をみた。見たことがあるような、楕円の形をしたモノが転がっている。
手榴弾だった。
熱い!痛い!熱い!!
僕はのたうち回った。
痛みは癒えることはなく、感覚も鈍くならない。
声はでないし、誰も助けてはくれない。
誰もいない。そばにいるのは…いやあるのは「母親」だった物体。
熱い!痛い!前回よりも更に!
ここで僕は知った。
モブの時には感じなかった痛み。
モブの時は知らなかった苦しみ。
「そうか…『モブ』の時は即死だったのか…。」
3個目の手榴弾が投げ込まれ、事切れるまでの瞬間に気が付いた。
エキストラに移行した僕は「死の痛み」を感じるようになったんだ…。と。
男性 14歳 爆発による頭部破損の為 死亡