橘 誠也(たちばな せいや)2
死の描写と残酷な描写があります。
苦手な方はご注意ください。
そっと破壊された壁から外を伺い、上を見た。
さっきの黒い物体はなさそうだった。
壁から外へ出て、あいつらが居たはずの場所へ行くと…赤いモノの正体が分かった…。
血…だった。
喉にすっぱいものが込み上げてくる…。
見るんじゃなかった。
そこには2人の人間がぺちゃんこに押しつぶされて死んでいた。
何がどこで、どこが何か分からないくらい交じっていたが…血に染まった制服だけが「身体はここにありました。」と主張していた。
もう一人いたが…下半身しか残っていない。
そして下半身から中身が圧迫によって飛び出していた…。
飛び散った血と変な方向へ曲がっている足…その真ん中から飛び出した…肉。
腸ぽいモノが見えた。
「うぐぇ…」
さっきは堪えたモノが一気に上がってきた。手で押さえるが…抑えきれず出てくる。
喉の奥で逆流した「それ」が鼻の方へ流れ、ツンとした痛みが来た。
涙が流れる…。
痛さでなのか目の前の現状にかは分からない。
もう、押さえていられず止まるまで吐き続けた。
血と吐瀉物が混じっていくのが、余計に気持ち悪くさせる。
俺は顔を背け、袖で口を拭きながら校舎に戻ろうとした。
職員室の前で誰かがしゃがんでいた。
美術教師の渡部だった。
渡部は何かを拾った様で、手の中の物をまじまじと見ている様だ。
声を掛けようかと思ったが、今の自分の顔は汚れているんじゃないかと思い、躊躇した。
顔を洗いたいと水を探したが、廊下にあるはずの水道は吹き飛ばされたのか、瓦礫の下には水は流れているものの、顔を洗えそうにもない。
外の蛇口もあるが…あそこを通りたくははかった。
もう二度と行きたくない。
仕方ないと渡部がいる方へ向いた時、渡部は居なかった。
確か職員室に洗面台があったはずだと、職員室へ向かう。
扉を開けると、そこは悲惨な状況だった。
職員室を何かが勢いよく突き抜けたように、二面の壁にぽっかりと穴が開いていた。
そして…その勢いに巻き込まれ、跳ね飛ばされた様に…残っている壁に人間が張り付いていた。
逆の壁にも張り付いている人間…折りたたまれたような形の人間…。半分無い人間…。
「う”ぐっ…」
さっき吐き切ったのか何も出ず、ただ胃が引き攣って痛いだけだったが、嘔吐きは続いた。




