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生徒達の話によると、我々が到着したのは、教師が生徒を道連れに外に出てから少し経った後だったらしい。もしも、もう少し早く着いていれば救えたかもしれない、と考えてしまうのはタラレバの話で、無意味なのだが、やはり頭には過ぎる。
「君たちの名前を教えてくれないか」
カイルが聞くと生徒達がビクッとした。尋問でもされるのだろうかと思っている様だ。
が、一人だけ反応のない子がいた。勝気な彼女…きゅっと唇を締めたまま、こちらを真っ直ぐ見ている。
「あぁ…心配しなくていい。救助者リストを作る為だよ。他の子達にも担当者が聞いている」
俺はカイルの横でメモを出した。
「滝中怜君と橘誠也君と…後は…?」
「岡友樹です」
「篠本麻衣です」
岡少年に続き、滝中少年にくっ付いていた女子生徒がくっ付いたまま言う、滝中少年は動きにくそうにしながら、反対の手で離させようと努力している様だった。
そして最後に…我々をじっと見据えている女生徒が名乗った。
「本庄…凛です」
聞き覚えのある名前だなとふと思う。
5人をカイルの機体に乗せ、安全確認した後、ドアを閉めた。
そして自分の機体へ戻り、救助者を乗せた機体の離陸を待ち、その後ろに付く。
反対側に目をやると攻撃対象は沈黙している様だった。
陽動と殲滅に当たっていた二機も、我々に気付いたのか救助用機体に一機づつ付く。
B隊はどうなっただろうと考え始めた頃、無線が鳴った。
「エリア24の攻撃対象の殲滅完了。救助対象者も無事保護されました。ミッションクリアです。全隊員は速やかに帰還してください。お疲れ様でした。」
いつもの機械的な女性の声に肩の力が抜ける。
いつも通り自動運転に切り替わり、俺はヘルメットを脱いでため息をついた。
生徒を撃つ事にならなくて良かったと思った。
前回、何かに駆り立てられた様に「子供と犬」を撃った時から、自分はおかしくなったのかと悩んでいた。犬の手遅れを理由に子供共々撃つなんて…。
そしてそれを「興奮」として反応しただなどと、誰かに知られでもしたら、俺は…。
「はぁ…」
止めどなくため息が零れる。
後悔の念や自身に対する疑念が静かになると襲ってくる。
自動操縦に変わった機体は操縦桿を離しても大丈夫なので、手を放しポケットから小さなケースを取り出した。
中に入っている白い錠剤を舌の裏に入れる…。
支給されている安定剤だが…多用は禁物なのは分かっている。
俺はもう一度深呼吸をした。
「NT5510…聞こえるか?応答してくれ。」
無線からカイルの声がした。しかも珍しく個人の方だ。
「こちらNT5510…。どうした。個人無線からなんて珍しいな」
「いや…少し…な。」
「なんだ?」
「…今乗せている保護対象者の中に迎撃部隊の…俺らの上官殿の娘がいる。」
「…本当か?」
俺は答えながら一人頭に浮かべた。
「本庄…凛…本庄指揮官の娘か」
「あぁ…。」
「だから…か」
ため息が一層深く出た。




