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岡…と言う少年は言われた通り銃を下げた。
小刻みに震えているのが分かる。
この状況だ、銃がどこからの物にせよ、撃ってしまうまでに追い詰められていても仕方ない。
ヘルメットを脱いだカイル隊員が、少年に近付き手を差し伸べた。何も言わなくても分かるだろう。
少年も銃を差し出した。
隊員達の緊張がやや緩んだ。
「この銃は預かっておきます。人数を確認したいので集まって貰えますか?」
生徒達は言われるがまま、カイルの前に整列した。
男子生徒6人、女子生徒9人…大人は居なかった。
「教師の方や…大人の方は…?」
カイルの問いかけに、首を振る者と俯く者に分かれた。
1人も大人が居ないとは…。
カイルの顔に困惑と痛ましさが表れる。
俺はカイルにその場の人数確認や説明を任せ、生死を確認する為、倒れている子に向かった。
息は無かった。
肩と頭から血を流している…おそらく即死しているだろう。誰が撃ったのか、そして銃の出所をハッキリさせる事になるが…。
ちらっとカイルを見た。
カイルもまた俺を見ていた。
…俺は静かに首を振った。頷き返された後、後ろに居た戦闘用機の隊員が布を持ってきた。遺体を包む為だ。
黙々と2人で遺体を包む。
可哀想に、まだ若いのに。
隊員は布に包まれた遺体を担ぎ、自分の機体へと戻って行った。
三機の救助用には乗せられないと判断したのだろう。少しでも気を落ち着けさせる為にも、遺体は他の生徒と分けた方が良い。それに、生きている人間だけで救助機内が一杯になる。
「お前は先に戻れ、後の救助誘導は俺達がする」
そう言って遺体の安置と保護者への連絡を任せ、戦闘用機の扉を閉め、飛び去るのを見送った。
再びカイルの元に戻ると、生徒達は5人ずつに分かれて整列していた。
世界がこんな状況になって、学校での教育が「訓練」として役に立っているのを見ると、複雑な思いがする。
岡少年とさっきの女の子…勝気な感じの女の子とその友人らしき5人を置いて、他の10人を先に救助機へ誘導してもらう。
「君たちも救助対象だが、乗り込むまで少し聞かせて欲しい。この銃は誰の物だ?」
カイルが少し険しい顔をする。
「さっきまで先生が1人居ました。その先生が拾った…と…」
女の子にくっ付かれている男子学生が口を開いた。
「君は?」
「滝中怜です」
「では滝中君、その先生は何処に?」
「上野…撃たれた子です。上野を撃った後、僕らを撃とうとしましたが、誠也が止めてくれて…」
名前を呼ばれた子がおずおずと手を少し上げた。
「君が誠也君?」
「橘誠也です」
「それで?」
「銃をその時落としたんですが…パニックになったのか、とにかく混乱している様で、近くにいた男子生徒を連れて…外へ…」
「外に出たのか…。それは…」
カイルの顔が曇る。
その教師と生徒は生きてはいまい。…と。




