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体育館の反対は機体全てが着地できるほどのスペースはなかった。
攻撃対象がこちらに来ぬ様二体の機体が陽動しつつ攻撃しているが、いつ何時こちらに来るか分からないし、まして流れ弾が来る事を考慮しなければならない。被害が出る前に迅速な救助が求められる。
まず、A隊の人命救助用機体の三機が体育館の真横に着ける。
激しく木が揺れ、木々のざわめきがこちらに呼びはしないかと冷や冷やしたが、陽動作戦は上手くいっている様で、影もこちら側からは見えない。
いざという時の為、二機が上で旋回し警戒をし続ける。
俺と残りの一機は救助機体を挟んだ位置で、体育館よりやや離れた場所に着陸した。
装備品に有ったライフルを構え、救助機体に近づく。
周りを警戒しつつ、救助機体の武器を持たない隊員の後ろに付く。救助者をパニックに陥れる危険性が有るからと言って、丸腰でいなければならない彼らの心境は察するに余る。
「我々は…です…あなた方を…」
風がキツくよくは聞こえないが、先頭の隊員が体育館内の生存者に説明している様だ。
手を挙げ無害を主張しながら彼は入っていった。それに続く。
「後ろの者は銃を持っていますが、あなた方に危険はありません。大丈夫です。落ち着いて…」
俺の姿を見た途端に中にいる者達が、一斉に身を固くしたのが分かった。
緊張した空気が流れた。
ふと遠くに倒れている人間がいるのが見えた。
負傷者の様だ、見えるだけの血の量でも危ないと判断できる。早急に手当てをしないと…。
そう思い一歩足を動かした時、乾いた音と共に俺のつま先でフローリングの床が爆ぜた。
一人の男子生徒が銃を持っていた。
銃声に怯える女生徒数名が、しゃがみ込みながら悲鳴を上げた。
「落ち着いてください。あなた方に危害を加える気はありません」
俺はその場でライフルを縦に持ち手をあげて言う。
「そこに負傷者が見えます。早く助けないと危ない可能性が有ります。止血だけでも…」
「死んでんだよ…もう遅いんだ…そいつ…」
手当てを願い出る俺に被せる様に言葉を発したのは、銃を握りしめていた男子学生だ。
「君が殺したのか?」
俺の声に肩がビクッと動く。顔も心なしか青い。
「どうしてここに銃が…君の物か?」
隊員の声でさらに青ざめ…首を振った。
隊員が落ち着かせる為にヘルメットを脱ぎ、小脇に抱えた。
救助隊の隊員と、相手は銃を持った不慣れながらも撃ってきた学生。
学生に怯える必要はないのかもしれないが、彼は丸腰。
俺は、彼が撃たれたら撃ち返す覚悟を決めた。
「岡君…銃を下ろして…」
男子学生から少し遠い距離にいた女子生徒が、ゆっくりと言った。




