エキストラー前編ー
「モブ」から「エキストラ」に移行したと、頭の中に響くファンファーレと共に「何か」に告げられたような気がしてから、私は自分の「体」を認識した。
正しくはモブの時にはなかった「質感」を感じていた。
あの、私に響いたモノも今は声なのだと思う。
音は余韻すら残さず消え、確かめることは出来ない。
霧を掴むように不確かではあるけれど、あれは声なのだ。
多分。
私はまた14歳であるようだった。
窓のある部屋だが、少し狭いと思った。
光が差し込み爽やかな風が入っているから、今は朝か。
温度はわからない、暑いのか寒いのか。
風が肌に当たる感覚さえも分からなかった。
「ごはんよー」
私は二階にいるのだろうか、下から声が聞こえた。
おそらく「母親」だ。
「はーい」
口が勝手に動いた。いつも通りであるかのように。
手がドアノブを握った瞬間、私はまた爆発音を聞いた。
また私は死ぬのだ。と思った。また暗転するかのように瞬時に死ぬ。と
だが、生きていた。
体は痛かった。何がどうとかではなく、ただひたすら痛かった。
瓦礫の中にいる様で、自分の体がどうなっているか分からない。
声も出せないまま、目の前に大きな黒い影を見た。
そこで私は死んだ。
女性 14歳 爆発時の損傷により 死亡