山田 優一(やまだ ゆういち)8
「さぁ、ドアを閉めなさい。これからゲームするんだからさぁ」
渡部はマイクを持ちながら岡と撃たれて血を流す上野の所に近付いた。
「ほ…本当…に?」
震える声で上野が言う。
真顔で近付く渡部は、真実味を持っていた。
「うわぁああああー!」
岡が叫び上野から離れた瞬間、もう一度銃声が鳴った。
撃たれたのは…再度上野だった。
「うるさいってお前ら。本当に。…てか、そんな映画みたいな事ある訳無いだろ。よく考えて行動しなさい。…一回やってみたかっただけだよ。生意気なお前らに。俺を馬鹿にして来たお前らに」
上野は倒れて動かなくなった。
頭からじゅわっと赤い液体が広がっていった。
流石にあの距離では外さなかった、…頭を撃たれたのは瞬時に伝わり、皆その場から動けなくなった。
次誰が標的になるか分からないからだ。
と言うか、何故、渡部が銃なんて持ってるんだ?
僕の疑問を感じたのか、渡部がこちらを見た。
僕らは上野からそんなに遠くない。
次は僕らの誰かかも知れないと思う。でも、恐怖で動けなかった。
「何で銃持ってるんですかー?って顔してるな。そこで拾ったんですー」
渡部は職員室の方角を指差した。
「俺がこいつらから無視されて、止めても無駄だと分かったから職員室に帰ろうとしたら、目の前で職員室が吹っ飛んでよ。危機一髪だったわ。だけど、体育館が近いから避難しようとしたら、つま先にこれが当たったのー。千載一遇のチャンスだよ。嬉しかったね。お前らをこの騒ぎに便乗してヤレるって」
日頃の渡部からは想像も出来ない程、意気揚々と話す。
銃口は…渡部から1番近い僕では無く、凛ちゃん、滝中をすり抜けて篠本さんに向いた。
「俺、お前の事嫌いだったんだー、うるせぇし、陽キャ丸出しで…俺を汚物でも見る様な目で見やがって…」
言い終わる前に渡部は引き金を引いた。
が、滝中が篠本さんを庇い無傷だった。
「クッソ!先にお前にしとけば良かったな!」
銃口が滝中に向く。
僕が、僕が助けなきゃ…いつも考えていたじゃないか、こういう事が起きたら僕が助けて、皆のヒーローになるんだって…。
そう思っていたのに、いざこうなると動けなかった。
あぁ、僕はヘタレだ。
前の時は動けたのに…あの子の為に動けたのに。




