本庄 凛(ほんじょう りん)7-4
父と歩く検査室までの道は、さっきとは打って変わって安心して居られた。
「すぐ終わるから。…僕は中に入れないけど、ちゃんと近くにいるよ」
ドアの前で、そう言って私だけを部屋に送る。
離れて…不安が無い訳じゃないけど、落ち着いていられた。
足を踏み入れた部屋は、白い廊下がまっすぐに伸び、左右に扉が何個も並んでいた。
壁際に台が置いてあり、籠が置かれている。
ポーン
天井から音がした。
『本庄凛さん』
声が流れてくる。
『1の部屋で服を着替えてください。着ている服や下着は脱いでそちらの籠に入れてください』
1の部屋に入ると、小さい試着室の様なスペースだった。
小さな台の上には白い服と薄いパンツの様なものが置かれている。
「本当に下着も脱ぐのね…」
ごそごそと脱いで、自分がブラジャーを着けていなかった事に気付く。
「私…ノーブラで…」
父はともかく、怜に抱き着いたのかと…また恥ずかしさがぶり返してくる。
服は前後で別れていて、脇の所で紐を結ぶタイプだった。
本格的な手術着の様で…岡君を思い出させる。
「…大丈夫。検査だけだもの…お父さんも部屋の前に…近くに居てくれている」
独り言で、自分を励まし外へ出る。
籠に畳んだ服と下着を入れる。
これは帰りに着るのだろうか。それとも…。
ポーン
また音がした。
『着替え、お疲れさまでした。2の部屋にお入りください』
2の部屋に入ると、部屋が2つに分かれていた。
機械のある部屋と、操作室。
多分、ここはレントゲンだ。
操作室には白衣を着た人が2人いて、片方の女性が部屋に入ってきた。
「ここに顎を乗せて…」
普通の病院の様に息を吸って止めて…とテキパキと指示をしていく。
3の部屋も4の部屋でも、心電図やMRIの機械に入り淡々と検査が行われた。
本当に身体検査の様に各部屋1人が担当して、人との接触があまりないのは良かったのかも知れない。
ただ、本当に細部まで検査され終わる頃にはくたびれた。
『最後に6の部屋にお入りください』
ここが最後かと、入ると女性が筒状のガラス管何本かと、シリンジが入った銀色のトレイをカチャカチャと音を鳴らしながら持ってきた。
…苦手な採血だ。
対面で座り右腕を台に乗せる…深呼吸をするけれど、動機は治まらない。
昔に冷や汗が出る程、何度も失敗されたのがトラウマになっている。
…思わず部屋中を走り回りたくなる…。
採血の針が刺さる所を見たくなくて、彼女の半分マスクで隠れている顔を見る…。
あれ?さっきも見た…人だ。
紫のイヤリングが部屋の照明で煌めき、白い部屋の中目立っている。
どこかで見た形。
この形のイヤリングをどこかで見た。
赤・青・オレンジに…紫…。
そして…この目…祥子さんに…そっくり。
今朝会った青のイヤリングをしていた、あの祥子さんそっくりな人が夜とはいえ、わざわざ変えて検査室に居るなんて考えられない気がした。
でも、別人にしては同じ顔をしている…。
部屋に居る祥子さんが、ここに居る事も…ないと思う。
あの祥子さんだって、わざわざオレンジから紫に変えて…ここに来る意味が無いもの。
どこか、違いがないかと、目を凝らしてみる。
けれど…目立つほくろやこれと言った違いが見つからない。
『私は1人の…一個のデザインを使用した『 』です』
不意に頭に響いた。




