A班 救助用機体5021 カイル隊員5-5
本庄上官はもう一本、煙草を取り出し火を付けた。
そして、一口吸う。
「体内に侵入し、腹部に卵が産みつけさせる方法は…どんな事をしてなのかは知らん。しかし、
研究室の…研究員達は何らかの方法で体内へ誘導し、産ませている」
「それが…ジャンの言っていた『俺達が教えた』ですか…」
「多分な、以前に君に見せたリストを覚えているか?」
「はい。あれに研究室の所長と柳隊長…ジャンも載っていましたね」
「あのリストが、研究賛同者とその近隣者だ。そして…凛には部下だと言った女性も…研究員だ」
「江島女史ですね」
「あぁ、しかし、彼女も研究が中止になった事で事務業務についているはずだったが…」
「まだ、研究が続いているという事は…」
「おそらく学生達のデータを集めたのは彼女だ」
ならば、本庄上官の…娘も?と言いかけた所で、彼の煙草を吸う手が止まらない事に思い至る。
「もしかすると、凛だけでなく怜君も…明日、検査されるだろう。体調管理との名目でタイプの適合者かどうかも…」
「どうするんですか…もしも…」
言いかけて、滝中君の所にいた江島女史を思い出した。
「滝中君を部屋にお連れした時、江島女史がいました。その時彼が渡された服が…検査着の様でした」
「そうか…、もしもの時に備えて、俺は司令官と話をしておこう」
頷き…立ち上がる。
話は終わった。
しかし…。
「僕に何か…できる事はありませんか?」
煙草を咥えたまま、パソコンを抱えた上官が少し目を見開いた。
そして、口から煙草を取る。
「もしもの時は2人を助けてやってくれないか」
そう微笑んだ。
その顔はいつもの厳しい上官では無く、途轍もなく優しい父親の顔だった。
自分に割り当てられた部屋に戻り、シャワーを浴び…泥の様に眠る。
何かが起きない限り第二基地から移動した隊員は今日の業務は無いと通達もあり、今…表立っての指令が無い分、気を抜いて久しぶりにぐっすりと寝た。
思いの外、限界に近かったのだ。
しかし、午前中の間にその休息は終わる。
本庄上官からの電話で起こされたのだ。
想定していた…検査に連れていかれるより、現実の方が悪かった。
柳隊長に本庄上官の娘が連れだされ、事もあろうか検査室ではなく実験室に連れていかれたと言う。
身支度を整えながら、上官の話を聞く。
失礼ながら、急いでいる為、仕方がないのは彼も承知の上だった。
「どうしてここに研究室が?」
「副司令だ。彼が…一室作っていた。まだ諦めていなかった」
「それで…?」
「そこで実験体にされている同級生を見たらしい。…後は…誠也君の死を知ったと」
あぁ…知ってしまった…。
そう思った。
彼女が知る時、慰めが側に…そう、側に滝中君が居るべきだったのに。
「今、俺は娘の所に居たが…すぐ出なければいけない。君が…怜君を連れて娘の所へ行ってくれないか」
「Yes sir」
俺は二つ返事で部屋から出て、彼の部屋に行く。
説明もろくにしなかったが、少しの動揺や疑問も持たずに彼女の部屋へ走る滝中君と…共に俺も廊下を走った。
何か、懐かしい気持ちがしたのは、在りし日の藤田や純、アンドレアとの訓練の日々を思い出したからかも知れない。




