山田 優一(やまだ ゆういち)2
教室に一人になるまで待った。
帰宅用意はしてあるが、帰らず席に一人座ったまま。
誰も気には留めない。僕が何をしようがどこに居ようが。
各々自分の「青春」に忙しいのだ。
白い封筒を開け、開いた手紙には一言「誕生日おめでとう」
そう書かれていた。
可愛いメッセージカードでも、レタリングされた字体でもなく、一輪の花の絵すらもない、何の飾りもない、ただの白い紙に黒い字でたったそれだけ。
僕の誕生日は明日。
14歳の誕生日。
誰がこの手紙を書いたのか、そして僕の部屋に置いたのか…分からなかった。
親でもこんなにあっさりとした…いや寂しさすら感じる「お祝いの言葉」は送らないだろう。まして自室の机の上に。
せめて、クローバーくらいは書かれているはずだ。
何も楽しみやワクワクもない誕生日が、さらに影を落とすような、不気味さを伴うだけじゃないか。
こんな手紙。
僕はぐしゃっと握りつぶして教室のごみ箱に投げ捨てた。
捨てた時、何か胸が苦しくなった。
頭の中で「こんなはずじゃなかった」と嘆く声がする。
僕の心の声。
でも、聞こえないふりをする。
気にしないふりをする。
どうしようもないのだ。
夢のように覚めればいいけれど、現実の寂しさは去らない。
何かがずっと胸の中に重りのようにある。
物心つくぐらいから、ずっと寂しい。
一人は嫌だ。でも、人に嫌われるのが嫌だ。
だから、関わりに行けない。話せない。
だって、拒否された時にどうすればいいか分からないじゃないか。
辛いじゃないか。
確かに子供の頃は無邪気だった。
誰からも愛されてると思っていたし、現に親からも祖父母からも愛されてきた。
色白で細く、目も大きかったし、今みたいに眼鏡もしていなかったから、近所の人達からも可愛いと愛されてきた。そのはずだった。
でもそれは「子供」という割と誰にでもある「子供特有の幼さによる可愛さ」で、中学生にもなればそれは忌避されるものに変わっていくし、逞しさや成長がなければ人は離れていく。
嘆いてもそれはプログラムされたように当たり前に遂行される。
いつしか僕は誰からも見向きされない人間になっていた。
でも…それは当たり前だった。
話さない人間を誰も理解しようとはしないし、理解できないんだから。
頭で分かっていても、話せない。
自分からいけない。
だって…
「相手から来てほしい」




