A班 救助用機体5021 カイル隊員5-2
ヘリから降りてきたのは、第二の隊員だった。
顔は知っているが…名前は憶えていない。
成績が下から数えた方が速い…下位ランクの隊員。
そいつは俺の顔を見るなり、走ってきた。
「すいみません」
動揺が見て取れる。
「あの…あ」
「落ち着け」
鞄から何かを出そうとしては開かずにもたもたしている。かといって何かを言おうともする。
これでは…成績が悪いのも頷ける。
そんな下位の人間を、柳隊長は除隊させず自分の隊に入れる。
使い方は…捨て駒だ。
踵を返して本庄上官の元へ行こうとした。
「あの!これっ!!」
振り向くと何かを差し出している。
「あの…アンドレさんから…」
その隊員はごにょごにょと言う。
「アンドレ?アンドレアか?」
コイツが何故その名を出すのか。
「あ、はい…あなた…本庄隊長の隊のカイさんですよね?」
「第一所属のカイルだ」
コイツは人の名前を間違って覚えるタイプか?
「あ、はい。カイルさん。よく隊長の横にいらっしゃる…」
「あぁ」
「これを…本庄隊長に渡してください」
手元にあるのは「岡 友樹」と書かれたケースに入った…CD?DVD?
「何だそれは」
「頼まれました…アンドレ…アさんに」
「アンドレアに?」
ケースを受け取る…DVDの様だ。
「はい。俺の代わりをするから…これを本庄隊長にと」
「…代わり?」
「…はい」
隊員が言い辛そうにもじもじとする。
「基地の…爆破です」
DVDのケースを握りしめ過ぎたのかパキッと音がした。
「僕は…僕が本当はするはずだったんですが、代わると…。それで、柳隊長に会う前にそれを本庄隊長に渡す様に言われました。でも、僕は本庄隊長に会えないと思うので、あなたに…本当に丁度良かった」
隊員は、目の前でへらへらと笑いを浮かべ始めた。
コイツの…代わりに?アンドレアが…爆破を…?
俺は納得いかなかった。
どうして、目の前のへらへらした下位ランクと、上位ランカーのアンドレアが代わりになると言うのか…。
コイツが無理に?否、それで受ける程アイツは弱くない。
お人好しが過ぎたか?否、無謀な事はしない。
むしろそれならば2人が生きて帰る方法を考えて実行する。
「他には…?他には何か言っていなかったか?」
「特には。ただ『死んだ』と伝えてくれと」
「…」
ますます手に力が入った。
「おい、そこに居んの川島か?」
誰かが声をかけて来た。
振り返ると玄関の前に誰かいる。
こちらに向いているが…逆光で顔があまり見えない。
しかし…玄関灯に照らされている短髪の…金髪。
…ジャンだ。
咄嗟に持っていたDVDを上着の内ポケットに仕舞う。
「何してんだよ。お前、なんでここに居るんだ?」
ジャンがズボンのポケットに手を突っ込みながら、不遜な態度で近寄ってくる…川島と呼ばれた隊員の顔から笑いが消えた。
「お前、任務は?柳隊長の命令に背いたのか?」
「いえ、そうでは…」
怯え始めた川島にジャンが近寄ると、次の瞬間いきなり殴りつけた。
勢いに負けて川島が地面に倒れるが、その上から踏みつける。
「止めないか!」
止めに入る俺をみて、ジャンの顔に笑みが浮かんだ。
「あんた、こっち来れてたんだ」
「足を退けろ、卑怯者め」
「うがっ!ぁぁぁうっ…」
足に体重をかけたのか下に居る川島が叫び、蠢いた。
俺は奴の肩を持ち、思い切り横へ押し退け…川島を助け起こした。
「何だ?お前ら仲良いの?」
「否、さっきここで会ったばかりだ」
川島の服を少し払ってやる。
「フーン。川島…お前、爆破はどうしたんだよ」
「それは…第一の…」
「あ”?ハッキリしゃべれっていつも言ってんだろ」
第二基地での面影が、一欠けらもないジャンに驚く。
否、逃げた時はこんな感じだったが…ここまで横暴だったか?
「第一のアンドレアさんが…代わって爆破されました」
俺の腕に掴っている川島が言うと、より一層ジャンの顔が笑顔になる。
「何お前、第一の奴に押し付けたの?」
抑えることなく笑い声をあげた。
「OK。OK。隊長のとこに行こうぜ」
そう言って川島の肩に腕を回し、連れ立って行く。
殴りたい衝動を抑えながら、2人を見る。
去り際にジャンがこちらを見た。
「またな。カイルさん」
手を挙げて玄関へ消えていった。
「外道め…」




