A班 救助用機体5021 カイル隊員5-1
疲弊しきった身体と、犠牲者の分だけ十字架を背負った様な…気の重さを引き連れ、第四基地に着陸したヘリのドアを開いた。
カチャカチャと、後ろの席からも聞こえた所で彼も居たのだと思い出す。
俺は無言で降り、後ろのドアを開けてやる。
俺を気にしてか…彼も無言で降りた。
基地の、転々と点いている部屋の明かりだけが暗闇に浮かんでいる。
綺麗に並んだ機体を眺め、無事にここへ辿り着いた者達の事を考える。
そして、死んでいった隊員達の事を。
すぐ横に灯りが点いた。
玄関口の人感センサーで点く灯りだった。
自動ドアが音もなく開き、中から人が出てくる。
本庄上官だった。
俺は疲れた体に鞭打ち、敬礼をし挨拶を述べる。
「いや、いい。ご苦労だった」
手で制され、俺は掲げていた手を下す。
直立不動はそのままだ。
「楽にして報告を」
簡単な言葉で指示する彼の顔を見ると、俺と同じく疲れ切った顔をしている。
俺は短く返事を返し、ここまでの起こった事を手短に話す。
基地の多くの犠牲者、同隊のアンドレアの事…そして、人体に産み付けられた卵とジャンの事。
「そうか…」
一言呟いた後、上官は滝中君に気付いたらしく「詳しくは執務室で」と、先に彼を部屋に案内する様に指示が下った。
本音を言えば俺も休みたかった。
が、隣に居る彼は尚更だろうと、上官に言われた部屋へ案内する。
長い廊下とエレベーターに乗り…また廊下を歩く。
その間、俺も彼も一言も話さなかった。
廊下の窓から見えるヘリポートの灯りも、街の薄暗い赤い光も、薄暗くなった廊下を彩りはしない。
お互いの息遣いが聞こえる様な…ただただ、静かに歩いていた。
部屋には江島女史がいた。
すぐに服を着替えるように。と、検査着の様な青い服と白い服を彼に渡す。
「彼の事は私にお任せください」
無表情に近い顔でそう告げる彼女の…グリーンのイヤリングが、部屋の照明でキラキラとして…目に痛い。
「では、彼はお願いします」
俺は目を揉みながらそう告げ、ドアノブに手をかけた。
「あ…カイルさん!…」
滝中君が服を抱えながら俺を呼んだ。
「ここまで…ありがとうございました」
深々とお辞儀をする。
「いや、礼には及ばないよ…。これからの事はともかく…今はゆっくり休んでくれ」
そう言って部屋から出る。
俺も…寝たい。
しかし、そんな事は言ってられない。
上官の執務室に足を運ばなければ。
執務室までの道のりが、異様に長く感じる。
窓を見ると、遠くの空にチカチカと光る小さなライトが見えた。
ヘリの航行灯だ。
さっき降り立ったヘリポートは、執務室までの間に位置している。
俺は足を速めた。
その間にもヘリは近付く…。
気が付けば走っていた。
自分は何を期待して、走っているのか…。
さっき滝中君と共に乗ったエレベーターに乗る間も惜しみ、その横にある非常階段を駆け下りる。
丁度、ヘリから男が一人降りてきた。
灯りに照らされる服は、隊員の制服だ。
靴も、ズボンも、腰に付けた鞄も…上着も。
「アンド…レ…」
しかし…降りてきた隊員は俺が思う人物ではなかった。




