本庄 凛(ほんじょう りん)6-7
「お待たせいたしました」
そう研究員に声をかける祥子さんを見る。
そうだ…ここで再開した祥子さんはオレンジの靴とイヤリングをしていた。
今朝会った祥子さんも、そうだった。
ガラスの部屋の方を見る。
あっちに居た、祥子さんだと思っていた女性は…誰?
本当に目の前の祥子さんとそっくりで、違いがあるとしたら身に着けている物の色だけ。
泣く私にハンカチを渡しながら、普通に研究員と話をしている。
姉妹なのだろうか、双子とか?
彼女に対する疑問もあるが…、それよりも、誠也が…死んだと事がショックで。
涙が止めどなく流れる。
でも、信じられない。
そんな…誠也が…。
顔が思い浮んでは消える。
小学生の2年で転校して、仲良くなった2人。
あの頃から2人は一緒で…怜と共に人気があった。
本人は自覚していなかったみたいだけど…。
小学生の…屈託なく笑う2人の顔。
少しずつ大人びていく中学生の…顔。
思い出が写真の様に浮かんでは消える。
「そうですか…はい」
祥子さんが研究員に何があったかを聞き終えた様だ。
「凛さん、今日は…部屋へ戻りましょう」
そう言って手を肩にかけてくる。
立つのを促されるけど、足はゆらゆらとおぼつかない。
すぐにへたり込んでしまう。
「少し待っていてください」
彼女は離れ、どこかへ行く。
ここにも出入りしている様に、迷いなく奥の方へ。
しばらくすると車椅子と研究員を1人連れて戻ってきた。
「立てますか?」
問いに私は答えられなかった。
「失礼しますね」
そう言って、私を抱え上げる。
研究員は補助的に私を支えた。
「ショックを受けたのでしょう…無理しなくて良いです」
車椅子に私を乗せると、ロックを外し外へ押していった。
カラカラと微かな車輪の音と共に、検査室の前を通っていく。
さっき、柳隊長と歩いた道を戻って…いく。
「ねぇ…本当に…誠也は死んだの?」
後ろで車椅子を押す祥子さんに尋ねる。
少し沈黙が流れた。
「ねぇ…誠也は死んだの?隊員の人が確認したって。…本人なの?」
もう一度聞く。
隊員の人は本当に「橘誠也」だと確認できたのだろうか、間違いじゃないのだろうかと…。
だって、顔とか知らない隊員がか写真とかで確認しても写真が間違っていたら…別人の可能性もあるじゃない…?と。
「…残念ながら…間違いは無いかと…」
言いにくそうな声が頭の上で発せられる。
「…確認した隊員は橘さんの事を知っている隊員でした」
「本当に?」
「えぇ…エリア24へ救助用ヘリの隊員として救助に向かった者ですし、第二基地の方へ一緒に帰還した者ですから」
頭の中にあのヘリの中に居た隊員の人達が思い浮んだ。
あの中の…誰だろう。それでも間違いは起こるはず。
そう、どうしても納得できない。
「第二基地に来られた後もお世話していたので、間違いは…ないのです」
「本当に?どうしても?誠也なの?」
涙を拭うハンカチを握りしめた。
「はい。カイル隊員が確認しましたので」
…………。
カイルさん?
……………。
救助しに来た時の…ヘリの中の…誠也を連れていく時の…。
カイルさんが頭に浮かんだ。
決定的だわ。本当に。
…本当に、誠也だったんだ…。
目の前が、真っ暗になった。
遠くで、祥子さんが大丈夫かと叫んでいる様な…。
でも…。
大丈夫と答えられただろうか?
口を動かそうとしたけれど…。
私は意識を…手放した。




