山田 優一(やまだ ゆういち)
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
授業の始まりか…終わりか分からないが、鐘の音が鳴った。
僕はゆっくりと突っ伏していた机から起きた。
何だか夢を見ていた気がする。
あまり良い夢とは言えない、ちょっとグロいと言うか、残酷と言うか、人によっては悪夢な…そんな感じの夢。
話してくれと言われてもちょっと話しづらい感じの…人によっては地雷…的な。
周りが騒がしく立ち上がっている。
さっきのは終了の鐘だったようだ。
僕は伸びがしたくなったが、背筋を伸ばす程度に留めた。
あまり堂々と寝ていたような行動を起こしてはいけない。
この教室内では特に。
後ろのドアが開き、誰かが誰かを呼ぶ声がする。
僕には関係ないけれど、体が少し強張る。
僕のいる席は気持ち良い窓際の席でもなく、ぼーっと窓の外を見ていられる一番後ろ角の席でもない。ましてや、こっそりと出入りしてもばれない廊下側の後ろ角の席でもなく、後ろの空いたスペースで誰かがボールを投げたら当たる確率の高い、教室のど真ん中の一番後ろ…。利点は寝ていても前の席の奴の背中で、教師にはばれないという事だけ…。
そして、裏を返せば僕には前が見えないという難点だけの席。
呼ばれた男子が僕の後ろを通ってドアの女の子に駆け寄る。
僕の椅子の背もたれに当たってから。
それでも彼は僕に一声かける事はしない。
そして僕も何も言わない。
背中に受けた衝撃が消えるのを待つだけ。
周りは決められているかのように一定の動きしかしない。
登校し授業を受け弁当を食い授業を受け、後は部活に行く者は部活へ、帰宅する者は帰宅。
そんな毎日が繰り返されるのが殆どだ。
中にはああやって、皆の前で「充実」した学校生活を送っていることを披露したがる奴がいる。
恋人が居て、遊びに行くのだと。好き合っているのだと大っぴらに掲げたい奴。
僕とは接点すらない人達。リア充…。
僕は鞄を持って教科書や筆箱を詰めていく。
机の中から一通の手紙が出てきた。
今朝、自室の机の上にあった手紙。
僕への…手紙。
まだ開けてもいない…。白い封筒。